2018年11月18日(日)

あの日の判断見つめ直す 担当者3人に聞く大阪北部地震

2018/7/18 0:40
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大阪府内で最大震度6弱を観測した地震は、月曜朝の通勤・通学時間帯を襲い、交通機関のまひや断水など都市機能の脆弱さをあらわにした。自治体、鉄道機関、民間企業の前線で対応に当たった3人に、18日で1カ月となる地震の当日を振り返ってもらい、今後に生かすべき教訓を聞いた。

病院断水に緊迫 大阪府危機管理監・大江桂子さん(60)

大江さん

大江さん

6月18日午前11時ごろ、約500人の入院患者がいる国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)から断水で水が不足しているとの一報が入った。あの長い1日の中でも、特に緊張をおぼえた瞬間だった。

同センターは一時的に電力不足となったが、危機を脱しつつあると認識していた。だが断水に加えてタンクから50トン以上の水が流出、治療や看護に不可欠な水が不足する別の危機に陥っていた。水道復旧の正確なメドはすぐにはつかめず、自衛隊に災害派遣を要請、給水車による支援を求めた。

府に南海トラフ巨大地震など大規模地震を想定した計画はあるが、今回は震源も震度も異なる。府全体の災害対応を担う立場として、被害を一つ一つ押さえ、適切な手を打つことに注力した。

高槻市でブロック塀が倒れ、女児(9)が死亡したと報告を受けたのは午前9時20分ごろ。同様の被害の確認を急いだ。

時間を追ってライフラインなど都市機能に直結する影響も見えてきた。最も想定外だったのは帰宅困難者の問題だ。南海トラフなどを想定した指針では、府が企業に従業員の一斉帰宅の抑制を呼び掛けることとしている。今回は局所的な被害と判断し、呼び掛けの対応を取らなかった。

結果として駅に人が滞留し、橋は帰宅する歩行者であふれた。帰宅困難者の混雑は二次災害を引き起こす懸念がある。よりきめ細かな対応を検討したい。

報告整理に時間 大阪メトロ安全推進課長・大西誠さん(55)

大西さん

大西さん

6月18日朝、強い揺れを感じたのは通勤中の地下鉄が職場の最寄り駅の1つ手前の駅に停車した直後だった。「災害対策本部の立ち上げ準備を」。電車を飛び出し、部下に指示を出しながら駆け足で職場へと向かった。

大阪メトロの本社ビルの対策本部に着いたのは午前8時半すぎ。保線や電車の管理担当など幹部ら約30人が集まって作業が始まったところだった。私は被害状況の把握と情報の整理に当たり、部下には作業の各手順を徹底するよう求めた。

午前9時すぎには各駅から最新の情報が続々と内線電話で寄せられた。駅からの情報は断続的に入る上、量が膨大で集約に予想外の時間を要した。報告内容を容易に整理できる点検リストを備えておく必要性を感じた。

大阪メトロでは御堂筋線で送電設備の大規模な被害を受け、御堂筋全線での再開には半日以上を要した。

利用者への情報発信は通常の運転見合わせ時の規定を準用し、各線が再開するたびにツイッターで配信するよう担当課に指示。ただ再開までの見通しを伝えることまでは発想が及ばなかった。

メトロの場合は線路などの安全確認後、試運転などを経て運転を再開する。せめて安全確認後に「1時間後に再開の見通し」などと伝えられたと今は思える。関係各部と情報発信のあり方について議論を始めている。より積極的に情報を発信できるようにしたい。

10分で帰宅指令 ダイドードリンコ人事総務本部長・浜中昭一さん(53)

浜中さん

浜中さん

ダイドードリンコの本社は大阪市北区中之島にある。6月18日は午前9時の始業時刻より1時間早く出勤しており、ビル18階の職場に到着直後、ビルがつぶれると思うほどの揺れに襲われた。

災害時の私の役割は本社勤務の約200人の安否を確認、行動を決めること。ビルが揺れる中で「机の下に入れ」と在席中の約40人に叫び、他の社員の出勤をどうするか考えを巡らせた。

その時点では正確な震度は分からなかったが、通勤途上の社員が無理に会社を目指したときに余震に見舞われる危険を真っ先に考えた。約10分で全社員の帰宅を決めた。

判断の後は対応に苦労する場面もあった。社員の安否確認をしつつ、各部署の社員と手分けして電話やメールで帰宅を促した。伝わるまでの間に指示を求める社員からの電話が相次ぎ、限られた人数で対応を迫られた。

会社は震度6弱以上の地震発生時の対応について出勤中は原則、その場で帰宅の指示を待つこととしており、生真面目な社員ほど電話で自ら指示を仰ごうとしたようだ。

今回の地震で少なくない社員が出社の判断で揺れ、指示を求めた。通信手段が途絶する災害が起きれば、迷っている間に余震に巻き込まれる事態も起きかねない。

震災後は当日の対応を振り返り、自分なりに検証をしている。災害時の行動は自分で判断して良いとの前提に立ち、社員の意識改革など、防災対策を前進させたい。

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