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リーマン危機前夜の日銀議事録 先手打てず
白川新総裁、市場機能を重視

2018/7/17 19:00
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日銀は17日、2008年1~6月の金融政策決定会合の議事録を公開した。同年秋の世界金融危機(リーマン・ショック)が近づいていた時期だ。日銀内には警戒もあったが、国内景気の回復シナリオは維持。総裁が福井俊彦氏から白川方明氏へ交代してからも、金融政策は現状維持で貫いた。危機の回避に向けて先手を打とうとする機運は、乏しかった。

07年夏に深刻になった米住宅ローン問題は年が明けてからも混迷が続いた。金融市場での信用収縮がやまず、米金融機関の損失は拡大していった。株価や住宅価格も下がり、米国では個人消費にも悪影響が表れていた。

記者会見する福井日銀総裁

記者会見する福井日銀総裁

「今日もご覧の通り大幅に下がっている」。08年1月22日の金融政策決定会合で、福井総裁は株価ボードを横目にみながら漏らした。会合を開いた2日間のうちに日経平均株価は1割近くも値下がりし、信用収縮の波が日本に及んでいるのは明らかだった。「不確実性はいやがうえにも増してきた」(野田忠男審議委員)

それでも国内景気は「生産・所得・支出の好循環のメカニズムは基本的に維持されている」(福井総裁)との判断は崩さなかった。短期金利を0.5%に誘導する金融政策の現状維持に全員が賛同した。

一方、同じ日、米連邦準備理事会(FRB)は4.25%から3.50%へ緊急利下げを実施。事態の認識の違いが、対処の差として明白に表れた。

3月にかけ、米国では証券化商品や金融保証会社(モノライン)の格下げが相次ぎ、同じ金融機関の間でも、取引相手行の経営に対する疑心暗鬼が広がっていた。

3月の会合で水野温氏委員は「クレジット市場が機能不全に陥っている」と指摘。岩田一政副総裁は「1兆ドルのクレジットの収縮が起こったときに経済にどういう影響があるか」と厳しいシナリオを提起した。

だが日本の設備投資や個人消費は失速していなかった。景気拡大シナリオは「現時点で変える必要がない」(武藤敏郎副総裁)。3月7日、福井総裁と武藤・岩田両副総裁の最後の会合も金融政策は現状維持となった。

なぜ利下げに慎重だったのか。福井総裁の閉会前のあいさつに答えがにじみ出ていた。

「金融政策は金融市場や金融機関の行動を通じて経済に伝播(でんぱ)していくものなので、金融機関の競争力を強くしていく、金融市場の機能を向上させていくという合わせ技をかませねばならない」。13年から強力な金融緩和を推し進める黒田東彦現総裁と対照的でもある。むやみな緩和は金融機関の収益や金融市場の機能をむしばむ、という副作用への懸念が強かった。

就任の記者会見をする白川日銀副総裁(当時)

就任の記者会見をする白川日銀副総裁(当時)

そうした考えは白川新総裁(4月9日までは副総裁の立場で総裁を代行)へと引き継がれた。3月21日の副総裁就任会見では福井氏のあいさつをなぞるように「金融政策は金融市場や金融機関の行動を通じて効果を発揮するものだ」と語った。福井体制の政策も「非常に大きな緩和方向の力を発揮している」とした。

白川体制となって初めての4月8~9日の会合も、議論の構図は大きくは変わらなかった。国内景気の判断はやや慎重になったが「緩やかな成長経路をたどる」という前向きな展望は維持。金融政策も現状維持に全員が賛成した。

白川氏は0.5%の政策金利について「引き下げ余地はあまりない」と指摘。4月30日には「金融政策や財政政策の効果に過大な期待を抱くべきではない。問題の出発点である不均衡の調整の必要自体がなくなることはない」とも述べた。

米国で起きていた信用収縮の動向を非常に警戒していたが、それが政策対応にすぐにつながるわけではないと出席者の多くで共有されていた。

4月以降、欧米中銀が流動性を高めるよう対応したことなどを機に市場心理が一時的に持ち直してきた。5月の会合では「過度の悲観論が修正される過程が続いている」(野田委員)、「米景気が大きく下振れするリスクが減っている」(須田美矢子委員)といった発言も増えた。

6月には白川総裁も「たぶん(大手銀行が突然破綻するような)危機、最悪期は去ったのだろう」と警戒度を緩め、利下げの必要性はさらに遠のいていった。

しかしその3カ月後、米リーマン・ブラザーズの破綻を引き金に世界金融危機が起こった。日本経済にも深刻な打撃が及び、日銀は10月末、利下げに追い込まれた。市場では「欧米に比べ対応が遅すぎた」との批判は少なくない。(後藤達也)

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