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フランス戴冠 かみ合った個と組織

至言直言 水沼貴史

前半、同点ゴールを決めるクロアチアのペリシッチ=沢井慎也撮影

決勝でこれだけ点が入るとは思わなかった。理由は立ち上がりからのクロアチアの奮闘にある。疲労の極限にもかかわらず、積極的に前に出た。

MFのブロゾビッチは全選手の中で最も走り、1トップのマンジュキッチも前からプレッシャーを掛ける。走りきる、戦いきる執念には心を打つものがあった。チームとしてこう戦うというのも徹底されている。特に、ボールを失った瞬間には必ず複数人で囲んで再奪取を狙う。取り切れなかったとしても後方で守備のブロックを築く時間を稼ぐ。現代サッカーで必須の要素を最も表現できていたチームだった。

攻撃にも工夫があった。狙いどころは、フランスの中盤、カンテやポグバが動いた後のスペース。左MFのペリシッチが内に入ったり、マンジュキッチが下がってポストプレーをしたりと、うまく活用した。パスの長短もうまく変え、フランスの守備に的を絞らせなかった。

優勢に試合を進めていただけにセットプレーでの失点が残念だった。FKの1点目。壁の後方で選手が横1列に並ぶ位置が低かった。最終的にはオウンゴールだったが、あの深い位置で相手の誰かにボールが合えば、即座にフィニッシュになってしまう。大会を通してセットプレーからの失点が多い一因だった。

1点を返した後のPKも、やや不注意だったと言うしかない。ペリシッチの腕にボールが当たったのは偶然だが、体からあれだけ腕を離せばハンドを取られても仕方はない。VARが導入された今大会では、特に警戒が必要だった。

フランスは結局一度もリードを許さなかったことが、若いメンバーにプラスに働いた。ただ、そういう状況をつくらなかったこと自体がデシャン監督の手腕ともいえる。

この日でいえば、早め早めの交代策。55分に引っ込めたカンテは、守備時にモドリッチに引っ張られ、穴をつくっていた。攻撃に転じても長いボールを出せない弱点を見透かされ、囲まれてボールを奪われた。展開力の高いヌゾンジに代えることで試合は落ち着いた。

後半、ゴールを決め喜ぶフランスのポグバ(左)

そもそも早めの交代ができるだけの選手層や、個の力があった。象徴的なのがポグバの3点目。ボレーであれだけ長く正確なパスを出し、前へ上がって仕留める力には驚くしかない。残念ながら、クロアチアにはこれほどの層の厚みはなかった。

デシャン監督が6年間の長期にわたって指導を続けていることもフランスの強みだった。じっくりとチームをつくり、選手との信頼を積み重ねてきたことで、強烈な個をまとめて組織的に戦うことができたのだろう。

この日も試合を左右したVARは、大会自体の方向性を決める力もあった。悪質なプレーは減り、逆に互いが攻撃で持ち味を出す試合が目立った。0-0で終わったのも1試合だけ。終了間際の劇的なゴールも多かった。近年では一番のいい大会だったと思う。(サッカー解説者)

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