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フランス戴冠 20年の時をへだてて

2018/7/16 8:30
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優勝トロフィーを掲げるフランスの選手=三村幸作撮影

優勝トロフィーを掲げるフランスの選手=三村幸作撮影

雷鳴が絶えず鳴り、一瞬の稲光がモスクワの空を明るく染める。この雷雲に乗るかのように、クロアチアは景気のよい「けんかサッカー」で攻めに出た。

フランスは動じない。最終ラインを組むバランとウンティティ、その手前のポグバとカンテ。2列横隊の強固な守りでクロアチアの攻めを払いのけながら、嵐が下火になるのを静かに待つ風情。

それが弱者の窮余の守備固めには少しも見えず、「相手の技をすべて受けきってこそ本物」と胸を突き出すプロレスのチャンピオンに通ずるたたずまいを、今回のフランスには感じるのだ。

先制点はベルギー戦に続いてセットプレーからで、グリーズマンが蹴ったFKが相手FWマンジュキッチのオウンゴールを誘った。追いつかれた後の勝ち越しゴールは相手のハンドをビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が見とがめてのPKだ。失点しても、風上に立ったままびくともしないフランスに草木もなびくようだった。

クロアチアの足が止まった後半は「ショータイム」。ボールを拾ったポグバがピッチを斜めに両断する高速パスで快足エムバペを走らせて、自分もゴール前に殺到して今大会初得点。右足シュートの跳ね返りをすかさず左足でたたき込む。遅れじと4点目を決めたのが19歳のエムバペで、1958年スウェーデン大会、ブラジルのペレ(17歳)に次ぐ10代でのW杯決勝スコアラーとなった。

主将と監督の両方で世界一になったのはデシャン監督だ。こちらはブラジルのザガロ、ドイツの皇帝ベッケンバウアーに続いて3人目の偉業。「個人的なプライドもある。だがそれよりも私の選手たちが誇らしい」。折からの大雨にスーツをぬらし、記者会見場に乱入してきた選手たちに着替えた服まで酒浸しにされながら、その顔は喜びでぴかぴかだった。

英雄ジダンとともにデシャン主将が頭上にトロフィーを掲げたのが20年前。この国の代表チームは、それから塗炭の苦しみを味わった。

ジダンの頭突き退場があった2006年ドイツ大会決勝でイタリアに敗れ、10年南アフリカ大会では選手たちによる「練習ボイコット事件」で1次リーグ最下位で敗退とどん底に。時の監督ドメネク氏が自分を罵倒したFWアネルカを強制帰国させたのが発端だった。

6年前にデシャン監督が就いてからも「大変だった。とても遠いところから仕事を始めたので」。荒療治の最たるものが3年前、FWベンゼマの同僚に対する恐喝事件。問題児を代表から追放したのはドメネク氏と一緒でも、人心はよく治まり小揺るぎともしなかった。人徳というべきか。「人間のグループにもバランスということがある」と語るのみで、監督はそのいきさつをつまびらかにしていない。

万能のベンゼマがいれば、フランスはもっと豪華なチームになったかもしれない。だが「泣いてベンゼマを斬る」監督の決断は、若いエムバペやグリーズマンを萎縮させずに生き生きと跳ね回らせることにもなった。この日が来てみると、すべては王座返り咲きに必要な試練だったと思えてくるのである。

(モスクワ=阿刀田寛)

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