実力接近、強固な守備に強国苦戦 FIFA大会総括

【モスクワ=武智幸徳】15日に決勝を控えたワールドカップ(W杯)ロシア大会で、国際サッカー連盟(FIFA)は締めくくりの作業に入った。今大会の戦術的傾向を分析するテクニカルスタディーグループ(TSG)、ジャンニ・インファンティノFIFA会長が相次いで会見を開き、大会の総括を行った。
13日の会見で大会ボランティアと同じ服装で現れたインファンティノ会長は「かつてない成功を収めたW杯」とロシア大会に賛辞を寄せた。大会運営や輸送の面で大きなトラブルもなく、献身的なボランティアの能力も含め、ロシアのスポーツイベントを円滑に開催する力を高く評価した。
TSGの座長は1994年米国大会優勝監督のブラジルのカルロス・アルベルト・パレイラ氏。メンバーにはオランダの不世出のストライカー、マルコ・ファンバステン氏、メキシコやコスタリカ、中国などで代表チームを率いたボラ・ミルチノビッチ氏らがいる。
パレイラ氏は「ゲームは攻守の切り替えなどが高速化し、たくさんのことが変わったが、優れたタレントが大きな武器であることは不変」と強調。ミルチノビッチ氏はタレントとともに「チームのために戦うスピリット」の重要性に触れた。
今大会の傾向として各チームの実力差の接近と強固な守備が大国を苦しめたと指摘したのはファンバステン氏。

「昔はラインとラインの間にスペースがあり、そこで創造性を発揮できたが、今日では右に行っても左に行っても前に行ってもスペースはない。ドイツやスペインはそれでも得点を取りにいき、大きなリスクを負うことになった」
また、ブラジルOBとして今大会の準々決勝敗退の理由を問われたパレイラ氏は「ハングリーであること、情熱、タレント、チーム運営のすべてがそろわないと勝てないのがW杯」とタイトルを獲得することの難しさを語った。
インファンティノ会長には、2026年大会から出場チーム数が48に大幅増することを懸念する質問が寄せられた。
同会長は今大会予選でイタリアやオランダ、南米王者のチリやカメルーンや米国が敗退した事実を指摘。出場チーム数を増やしても大会の質は低下しないこと、またパナマのような初出場チームが増えればサッカー界がより活況を呈するだろうと述べ、米国、カナダ、メキシコの共催となる26年大会の成功に自信を示した。
また、今大会から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)については「うまく機能した。誤った判定を是正できたケースもあった」と結果はポジティブだと主張した。