豪雨被害の久大線が再開 続く災害、交通網維持に難題

2018/7/14 9:40 (2018/7/14 11:13更新)
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昨年7月の九州北部豪雨で一部区間が不通となっていたJR久大線が14日、全線運行を再開した。橋梁が流されるなど大きな被害を受けたが、1年で再開にこぎ着けた。もっとも、今年もまた甚大な豪雨災害が発生、複数路線で被害が出た。年々深刻化する自然災害から公共交通網をどう守るか。事業者は難題を突きつけられている。

全線復旧し花月川橋梁を渡るJR久大線の車両(14日午前、大分県日田市)

全線復旧し花月川橋梁を渡るJR久大線の車両(14日午前、大分県日田市)

14日早朝のJR日田駅(大分県日田市)。午前5時25分の始発を前に、久大線の全線復旧記念切符を買い求める人の列ができた。始発列車には40人ほどが乗ったという。

午前7時56分発の普通列車にも約30人が乗車。豪雨で流され、架け替えられた「花月川橋梁」を通る瞬間、部活に向かう女子高校生らは携帯電話で風景を連写した。「1年ぶりの風景だし、朝からいい気分です」と友人と写真を見せ合った。

花月川を渡る久大線を写真に収める鉄道ファンの姿も。佐賀県基山町から訪れた松葉睦生さん(77)は「鉄道から自然や町を眺めるのが大好き」と話した。

久大線は昨年の九州北部豪雨で橋梁流失などの大きな被害を受けた。当初は復旧に3年かかるともいわれたが、工期の工夫などで1年での復旧にこぎ着けた。

全線復旧を記念したイラストが飾られたJR久大線の車内(14日午前、大分県日田市)

全線復旧を記念したイラストが飾られたJR久大線の車内(14日午前、大分県日田市)

同線は博多―由布院を結ぶJR九州の観光列車「ゆふいんの森」の主要ルートだ。21~22日には国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産になった日田祇園祭も控え、日田市の担当者は「観光振興に弾みがつく」と意気込む。

もっとも、昨年の豪雨からちょうど1年となる7月5日から、またも広範囲で豪雨が発生。JR九州では3路線が不通になった。

土砂が流入した肥薩線は一部区間で今も不通が続く。沿線に住む80代男性は八代駅(熊本県八代市)近くの熊本労災病院に透析に通うため、週に1~2度は利用する。「再開しないと困る」と不安げだ。同線は7月下旬にも運行再開を目指すとしているが、本格的な復旧作業が始まっていない区間も残る。

筑豊線の桂川(福岡県桂川町)―原田(同県筑紫野市)間も運転見合わせが続いている。

筑肥線は佐賀県唐津市の線路内に幅40メートルにわたって土砂が流入し、列車が脱線。福岡都市圏の通勤路線でもあり、復旧工事が進められた結果、11日から順次運行を再開した。唐津市から通勤していた30代の男性会社員は「運休している間は車で通勤しなければならなかった。再開してくれてうれしい」と話した。

■持続可能な交通網が課題に

JR九州では2年前の熊本地震や昨年の九州北部豪雨の被害による不通区間が残る中、今回の西日本豪雨でも新たな不通区間が生じた。限られた財源で持続可能な交通網をいかに守り、維持していくかが大きな課題になっている。

JR久大線が全線復旧し、日田駅で特急「ゆふいんの森」を出迎える人たち(14日午前、大分県日田市)

JR久大線が全線復旧し、日田駅で特急「ゆふいんの森」を出迎える人たち(14日午前、大分県日田市)

同社は14日、全線復旧した久大線の記念式典を博多駅で開いた。青柳俊彦社長は「再び久大線に人が戻ってきてもらえるように、国内外にアピールしていきたい」と話した。西日本豪雨についても「200カ所で被災し、2線区が開通していない。一刻も早く通常を取り戻し、九州を元気にしたい」とした。

式典に参加した福岡県の小川洋知事は久大線の復旧を祝うとともに、昨年の豪雨で今も不通区間が残る日田彦山線についても「一刻も早い復旧を」と求めた。

日田彦山線の復旧を議論する5月の検討会では、沿線自治体とJR側の立場の違いが浮き彫りになった。JR側は当初、独自試算した70億円に上る復旧費用の負担は困難との見方を示した。一方の自治体側は工法の見直しや、6月成立の改正鉄道軌道整備法の活用で費用を抑制可能と主張。ただ青柳社長は継続的な赤字の解消見通しがなければ再開しないとの姿勢を崩していない。

利用者が減る中で路線をどう維持するかは難題だ。今回の豪雨で一時不通となった筑肥線。脱線した西唐津発福岡空港行きの上り快速列車(6両編成)は、平日の昼時にもかかわらず乗客がゼロだった。

神戸大大学院の正司健一教授は「地域のためにどんな交通体系が適切なのか、幅広い議論が大切だ」と話す。鉄道は大量輸送に向く半面、小回りが利かず軌道敷設や安全対策に多額の費用がかかる。被災前の姿に戻す「復旧」にとらわれない解決策が必要という。

九州大工学研究院の塚原健一教授(インフラ計画学)は「最近の雨の降り方を見ると、交通網の寸断を予防するのは難しいのではないか」とした上で、今後の交通網のあり方について「需要や経済効果に加え、災害時のバックアップ機能をどう確保するかという観点も必要だ」としている。

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