2018年12月14日(金)

広域豪雨、リスク露呈 西日本被災から1週間

2018/7/13 20:16
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200人超が犠牲となった西日本を襲った記録的豪雨から13日で1週間。梅雨前線の停滞など悪条件が重なったことが異例の広域被害を引き起こし、専門家は今後も同規模水害が起こるリスクを指摘する。国や自治体は、事前の避難で被害を最小化する「ソフト防災」を掲げるが、気象庁の「大雨特別警報」は浸透していなかったことが判明し、住民への情報伝達に課題を残した。

6日午後7時ごろの中国地方の雨雲の状況。雨が強い順に赤、黄色、青、白となっている(防災科学技術研究所提供)

梅雨前線の停滞、太平洋高気圧の位置、大量の水蒸気を含んだ空気の流入――。こうした複合的な要因が重なり、今回の豪雨を深刻なものにしたことが、専門家の解析によって徐々に明らかになってきた。

梅雨前線は日本の北側にある冷たいオホーツク海高気圧と、南側の暖かくて湿った太平洋高気圧がぶつかって生じる。暖かく湿った空気が持ち上げられて上昇気流が生じ、水蒸気が雲になって雨が降る。

豪雨の要因の一つは太平洋高気圧が本州の東にあり、空気の通り道が広かったことだ。そこに南や南西からの風が吹き、大量の水蒸気を含んだ暖かく湿った空気が次々と西日本に流れ込んだ。

名古屋大学の坪木和久教授(気象学)は今回の豪雨をコンピューター上で再現。水蒸気の量は2017年の九州北部豪雨より10~20%多かったという。坪木教授は「九州北部豪雨の水蒸気量を超えたのは驚きだ」と話す。その状況が長時間続き、通常は30~60分しか持たない積乱雲が次々と発達して列をなす「線状降水帯」が西日本の広い範囲で何度も発生した。

今後も同様の豪雨は起きるのか。気象庁のデータによると、1時間降水量が50ミリ以上の豪雨は全国で増加傾向にあり、08~17年の10年間の平均年間発生回数(約238回)は、1976~85年(約174回)の約1.4倍となっている。

気象の専門家らでつくる国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化が進めば極端な降水量の雨が増えると指摘。今回の豪雨の分析にあたる気象庁の担当者も「(同規模水害は)当然あり得る」と認める。リスクに備えた対策が必要だ。

深刻化する水害に対応するため、国土交通省は17年に水防法を改正。「施設で防ぎきれない大洪水は必ず発生する」との前提に立ち、ソフトによる対策強化を打ち出した。ハザードマップの作成や早期の避難などで、人的被害を最小限にすることが狙いだ。

ソフト強化を推し進める背景には、ハードの整備が財政的に難しいという事情もある。18年度の治水事業費は約8千億円。1997年度の約1兆4千億円から4割以上減っている。

ソフト防災の前提となるのが、住民への速やかな災害情報の伝達だ。気象庁は13年から「大雨特別警報」の運用を開始。数十年に1度の大雨によって「重大な危険が差し迫った異常な状況」にあると判断した場合に発表され、15年の関東・東北豪雨や17年の九州北部豪雨などで出された。

今回も気象庁は6~8日にかけて、計11府県もの広域に大雨特別警報を出し、警報と前後して、各自治体も住民に避難を呼びかけた。

地域の3割が水没した岡山県倉敷市真備町地区では、市が6日午後10時に避難勧告を出し、メールや防災無線で住民に伝えた。40分後にこの地域が大雨特別警報の対象となると、市は7日未明までに緊急性の高い避難指示に切り替えた。

だが、大雨特別警報が迅速な避難など最大級の警戒を呼びかけていることを、知らない人も少なくなかった。同地区の男性(74)は「大雨特別警報が出たのはテレビで分かったが近所の人と『様子を見よう』と話して逃げ遅れた」といい、1階が浸水した自宅の2階から翌7日、消防のボートで救助された。

豪雨で防災無線が聞き取れなかったり、単独での避難が難しい高齢者が避難所や自宅2階に逃げられず、1階で被害に遭ったりする例もあった。警報が出たのが夜だったため、避難をためらう人もいた。

大雨特別警報を確実に住民らに届け、高齢世帯も含め避難に結びつけられるよう、政府は伝達方法の見直しを進める方針。災害リスクに詳しい広瀬弘忠・東京女子大名誉教授は住民にも「備え」を促し、「ハザードマップなどで自分に降りかかる危険を普段から認識し、警報や避難勧告の前に避難することも大切だ」と強調している。

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