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泣き寝入りしない セクハラ・パワハラに保険で備え

弁護士費用カバー、チャットで相談も

写真はイメージ=PIXTA

「ハラスメント」に備えた保険商品がにわかに注目を集めてきた。相手が嫌がり不快に感じる行為を指す言葉で、毎日顔を合わせる仕事場でトラブルが生じやすい。訴訟に発展しても、被害を訴えられた側に自覚がない例が少なくない。泣き寝入りしがちな被害者を助ける保険が登場する一方で、雇用トラブルに備えて保険に加入する企業も増えている。

弁護士に無料で相談

相談者「目標を達成できなかったら、社員全員が腕立て伏せをさせられるんです」

弁護士「録音できますか?スマホ(スマートフォン)で撮影できるならして下さい。民事訴訟法の判例では証拠とみなされます」

東京都内の香川希理弁護士はほぼ毎日、電話口でこんな助言をしている。ハラスメントの相談が多いのは20~40歳代の女性。香川氏は「退職後だと今ある証拠でしか対応できない。早めに一度電話して欲しい」と訴えている。

香川氏はミニ保険会社エール少額短期保険(東京・中央)と契約する弁護士3000人の一人。4月に発売した日本初の「ハラスメント保険」の契約者を対象に相談に乗る。ハラスメント保険とはトラブルに絡んでかかる弁護士費用を負担するものだ。エールが狙っているのは、泣き寝入りしていた被害者の補償だ。保険の名称は「弁護士保険コモンLite」。

エールは2段構えでサービスを提供する。第1段階はセクハラやパワハラが事件化できるか弁護士に相談する初期対応。「ハラスメントヘルプナビ」という名称で最長20分まで無料で相談に乗る。示談による解決を得意とする弁護士の情報提供や法律文書チェック(30分まで)も無料だ。

第2段階は法的トラブルになった時の対応だ。弁護士に事件対応を任せた時に発生する着手金や手数料、日当といった費用に保険金を支払う。例えば、パワハラ被害を受けた男性が300万円の慰謝料を請求する場合、弁護士費用総額約41万円のうち29万円強を保険金で受け取る。

待機期間に注意

販売開始から3カ月。薄井順一業務部長は「知っている弁護士がいないため、我慢する人も多かった」と潜在的な需要を予想する。月額保険料は980~1680円。通常の弁護士相談の相場は1時間1万円。契約開始後、1年など一定期間は保険金が支払われない可能性がある待機期間はあるものの、気軽に相談できる点がポイントだ。

さくら少額短期保険(東京・豊島)は7月から、月400円で加入できる女性専用の医療保険「なでしこ保険」に無料サービスを付けた。スマホにアプリをダウンロードすれば「弁護士トーク」をチャット形式で利用できる。「女性には様々なトラブルが降りかかってくる」とみて、セクハラやパワハラへの備えを始める。

こうしたハラスメントトラブルで被害者補償に乗り出した最初の保険会社は、大手の損害保険ジャパン日本興亜だ。日常の法的トラブル解決を支援するため、2015年12月から販売を始めた「弁護のちから」。リテール商品業務部の松尾慎太郎特命課長は「ここ10年でハラスメントを問題視する風潮が高まっている」と開発の意図を説明する。

損保ジャパンは団体保険の特約としてつくった。同社の団体保険に入る従業員であれば、月額1000円程度の負担で加入できる。17年度末時点の契約件数は推定2万人超で1年間で3.5倍に膨らんだ。6月には障がい者向けにも同じ商品の販売を始めた。不当労働のトラブルに備え加入機会を増やしている。

ハラスメントの定義も最近は顧客からの過度な苦情による「カスタマーハラスメント」、妊娠や出産を理由に退職を迫られたりする「マタニティハラスメント」など多岐にわたる。大手損保は企業が従業員に訴えられた場合の賠償金などを補償する保険を拡充しており、17年度は大手3グループの販売件数が前の年度比で6割も増えた。保険でハラスメントに備える時代に入ってきた。

(佐藤初姫)

[日本経済新聞朝刊2018年7月14日付]

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