2018年9月24日(月)

ため池決壊続く危険 豪雨で女児犠牲、点在で監視困難

西日本豪雨
関西
中国・四国
2018/7/13 11:35
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 西日本を襲った記録的豪雨で、農業用水を確保するため池が決壊する恐れがあるとして自治体が警戒を呼びかけている。広島県では豪雨時の決壊で女児が死亡。雨がやんだ後も周辺住民への避難指示が相次いだ。管理する農家の高齢化で点検が難しいほか、数が多く行政の監視も行き届かない実情が浮かび上がった。

点在するため池(13日午前、広島県熊野町)=共同

広島県福山市で犠牲になった女児の捜索現場付近(8日午後)=共同

 「ものすごい勢いで大量の水が住宅地に注ぎ込んだ。家具や車が流れていく様子に、足がすくんだ」。7日夜に決壊した広島県福山市のため池の近くに住む無職男性(66)は、地域があっという間に浸水した当時の状況を振り返った。

 決壊であふれた土砂が付近の家屋を押しつぶし、この家に住む女児(3)が死亡した。男性には同い年の孫がおり、「よく一緒に外で遊んだ愛想の良い子で、本当に痛ましい。ため池の水にあんな威力があるとは想像しなかった」と話す。

 市はこのため池の決壊について避難指示を出さなかった。大雨の影響で「当時は市内全域に避難指示を出していた」(同市)と理由を説明する。市内のため池は約2200カ所。担当者は「ため池は数が多く、河川と違い常に監視する体制が取れない。災害時に1カ所ずつ確認して対処することも難しい」と話す。

 ため池は地域の農家でつくる水利組合などが管理するが、高齢化や担い手不足で、日ごろの安全点検や監視が不十分な場所も増えている。女児が犠牲となったため池は周辺農家が共同利用していたが、管理者は明確に決めていなかったという。

 雨が降りやんだ後も危険なため池がある。

 福山市は11日、3つの地域でため池に決壊の恐れがあるとして避難指示を出した。市の担当者は「市民などから情報が寄せられ、危険が高まっていることが分かった」と話す。一部のため池が決壊したが、人的被害はなかった。

 東広島市も11日、河内町地区のため池に決壊の恐れがあるとして避難指示を出した。市内には4千カ所のため池があり、担当者は「管理する水利組合の代表者が分からない所も多い」と頭を抱える。

 広島県などによると、貯水量が1千トン以上あるため池は、豪雨などの災害後に県による安全点検の対象。ただ担当者は「発生直後は氾濫した河川や土砂災害への対応が優先される。人員に限りがある中で、早期にため池の状況を確認するのは難しい」と漏らす。「一度山に降った雨が時間をかけてため池に流れ込むこともある。晴れていても豪雨から数日間は注意が必要だ」としている。

■全国19万カ所、瀬戸内地方に6割

 農業用水を確保するために造られた「ため池」は全国に約19万7千カ所ある。年間降水量が比較的少ない岡山県や広島県など瀬戸内地方の7府県に約6割が集中する。多くが江戸時代以前に造られ、のり面が陥没するなど老朽化したため池は危険性が高い。

 農林水産省によると、2017年3月末時点で、住宅や公共施設の近くで被害の恐れがある「防災重点ため池」は1万1362カ所。このうち自治体が豪雨時の危険性を調べたのは約3割にとどまる。調査の結果、危険性があると判断された1399カ所で、そのうち補修などの対策を完了したのは半数という。

 防災重点ため池のうち、決壊による浸水想定区域などを定めたハザードマップを作成・公表しているのも4割弱の4030カ所。農水省は、ため池ののり面が膨らんだり亀裂や漏水が見つかったりした場合は、自治体などに連絡して対策を取る必要があるとしている。

 ため池の管理に詳しい茨城大の毛利栄征教授(農業土木学)の話 
 大雨時、ため池には川から大量の水が入るほか、地中にしみ込んだ雨が地下水として流れ込み、ゆっくり水位を押し上げることがある。決壊する恐れがある一方、山中で起きた土石流や流木を受け止めて被害を軽減する機能もあり、自治体などは補強を急ぐ必要がある。
 住民は、平時に雨の降り方とため池の水位の関係を注視し、危険性を判断するための経験を積み重ねることが重要だ。決壊による人的被害は少し高台に避難すれば防げる。避難の場所や方法を確認しておき、大雨の場合は早めに行動してほしい。

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