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ダムで防災 過信は禁物 西日本豪雨、一部地域で崩壊

専門家「訓練で地域の意識向上を」

西日本を襲った記録的豪雨では、ハード面の防災対策が進んだ地域でも犠牲者が出た。山崩れを防ぐためのダムを土石流が乗り越え、排水機の能力を上回る勢いで氾濫した河川もあった。新しい設備の強度を信頼して自宅にとどまった結果、自力で避難できなかった人もおり、専門家は「ハード対策の防災には限界がある。過信しないことが重要だ」と警鐘を鳴らす。

土石流被害を受けた広島市安芸区の梅河団地(11日)

住民5人が死亡した広島市安芸区の梅河団地では、12日も安否不明者の捜索が続いた。6日に起きた土砂崩れで約20棟が倒壊し、直径2メートルを超える巨岩や根こそぎ倒れた木々が散乱する。土砂災害などを防ぐため、裏山には広島県が2018年2月に完成させたダムがあるが、土砂を食い止めきれなかった。

倒壊した家屋の隣に住む男性会社員(49)は6日夜、2階の窓から、轟音(ごうおん)とともに自宅のすぐ横を流れる土石流を目撃。「山の上にダムがあるからと安心していた。まさかこれほどの被害が起きるとは……」と驚く。

ダムは勾配や地質など山の状況を基に設計。横幅26メートル、高さ8メートルのコンクリート製で、2千~2500立方メートルの土砂をためられるが、土砂で間もなく埋まったとみられ、受けきれなかった分が住宅地を直撃した。担当者は「相当程度の土砂崩れに耐えられる設計だったが、流れた土砂が想定以上だった」と話す。

広島県坂町でも、町内を流れる天地川の上流約1.2キロの地点にあるダムが崩壊し、約1800人が住む小屋浦地区のほぼ全域が土砂で覆われた。県によると、5年に1度目視で点検しており、直近の15年には異常は確認されなかった。

排水能力を上回る増水で川の氾濫を招いたケースもある。広島市安佐北区の口田地区は過去にも水害が起きており、国は18年4月、氾濫の危険がある川から別の川へ水を移し替える排水施設を刷新。排水能力を従来の3倍にしたが、水があふれた。

管理する国土交通省によると、6機ある排水ポンプのうち1機は何かが挟まった可能性があり、うまく機能しなかった。担当者は「増水の勢いがすさまじく、ポンプが完全に機能しても氾濫を防ぐことは難しかったかもしれない」と漏らす。

近くに住む女性(75)は激しい雨に避難を検討したが、「排水ポンプがあるから大丈夫」と自宅にとどまった。数時間後に床上約70センチまで浸水。自宅の2階に駆け上がり、ボートで救助された。女性は「もっと早く逃げればよかった」と反省を口にする。

徳島大環境防災研究センターの中野晋教授(地域防災学)は「ハード面の対策は被害を軽減させる効果があるが全て防ぐのは難しく、過信しないことが重要だ」と指摘。その上で「地域全体で防災意識を高め、日ごろの訓練を重ねることが命を守ることにつながる」と話している。

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