2018年9月20日(木)

子ども守る一手探す 大阪北部地震1カ月(熱撮西風)

大阪で震度6弱
コラム(地域)
関西
2018/7/16 2:00
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 先月18日に発生した大阪北部地震。小学校のブロック塀が倒れて女児が犠牲になり、子どもの安全が脅かされた。高槻市と茨木市を中心に府内の小中学校で塀や校舎の緊急点検が行われ、危険箇所の撤去が始まった。安否確認のためにソーシャルネットワーク(SNS)の利用や公衆電話の使い方を教え、保育園では子どもたちに身を守る方法を指導。地震で浮き彫りになった課題を解決する動きが広がっている。

塀と校舎の点検―――

 被害が集中した高槻市や茨木市をはじめ、府内の教育施設の緊急点検が行われ、危険箇所の撤去が進められている。

撤去作業が始まった中学校の塀(大阪府池田市)

撤去作業が始まった中学校の塀(大阪府池田市)

 国土交通省の緊急災害対策派遣隊は高槻市と茨木市の小中学校77校にあるブロック塀や校舎内を緊急点検した。応急危険度判定士の資格を持つ職員らが調査を実施。損傷具合や傾きなどが著しい「危険」と判定されたのは両市で41カ所あった。国交省近畿地方整備局の福岡芳明営繕調査官は「通学路では子どもの目線に立ち、他に危険な箇所があれば改善していく必要がある」と話す。

地震による校舎の被害状況を調べる国交省担当者ら(大阪府高槻市の西中学校)

地震による校舎の被害状況を調べる国交省担当者ら(大阪府高槻市の西中学校)

放課後の居場所復旧へ―――

 被災した高槻市の阿武山図書館は今も立ち入り禁止のエリアが残り全面再開できない。子どもたちは放課後の居場所を失ったままだ。本棚は金具で固定していたため倒れることはなかった。しかし、書棚の一部が抜け落ち、本が散乱した。破損した本棚では危ないため館内の大部分が利用できない。小学校のそばにあるため学校帰りの小学生でにぎわってきた。「地域の中で子どもが安心して過ごせる場所を取り戻したい」と寺原美穂子館長は話す。夏休みには1日だけ工作教室を開く予定だ。

本棚の中仕切りが壊れ、散乱した本を整理する職員ら(大阪府高槻市の阿武山図書館)

本棚の中仕切りが壊れ、散乱した本を整理する職員ら(大阪府高槻市の阿武山図書館)

幼児たちの防災対策―――

 地震発生当時、保育園では引き取りに予想外の時間がかかった。「中崎町かいせい保育園」(大阪市北区)では園児全員を保護者に引き渡すのに7時間を要したという。

 同園では地震当日の反省を生かして避難訓練が行われた。「地震です! みんな、机の下に入って」。アラーム音が鳴り響く中、保育士に促されて子どもたちが机の下で頭を守る。大きな地震では机が動いてしまうとわかり、机の脚を持つよう園児に指導。園児の安全確保だけでなく、職員も身を守る行動をするよう徹底した。藤久保則子園長は「自力で避難できない子どもの命を守るには、保育士の命も守らなければいけない」と話す。

避難訓練で机の下に入って頭を守る「中崎町かいせい保育園の園児(大阪市北区)

避難訓練で机の下に入って頭を守る「中崎町かいせい保育園の園児(大阪市北区)

古くて新しい連絡手段―――

 震度6弱に襲われた日、JR大阪駅では公衆電話に人々が並んだ。十円玉を握りしめた人に聞くとスマートフォン(スマホ)の電源が切れて、使えなくなったという。内閣府調査ではスマホ所持率が中学生で58・1%、小学生でも29・9%という。スマホになれた世代は公衆電話を使うことになれていない。大阪市立阿倍野防災センターでは、災害時の公衆電話機の使い方を学ぶコーナーがある。柿木敏也・同センター長は「公衆電話は災害時に一番つながりやすい。小さい子どもはスマートフォンを持っていないことも多く、使い方を知っておいてほしい」という。SNSが当たり前の十代にとって、災害時には公衆電話が古くて新しい通信手段になる。

阿倍野防災センターで公衆電話機の使い方を学ぶ小学生ら(大阪市)

阿倍野防災センターで公衆電話機の使い方を学ぶ小学生ら(大阪市)

新たなツール駆使―――

 SNSを使った安否確認サービスも活用が進む。学生情報センター(京都市)は3月、学校向けに提供している学校専用安否確認システムに「LINE」の対話アプリとの連携機能を追加した。学生の携帯電話メール利用率は低く、大阪北部地震時には同サービスでの返答率は5割にとどまった。メールを見ない学生も多く、利用者に応じた安否確認の方法を変えていく必要がある。同システム開発担当者は「9割近い返答率を目指す」と対話アプリでの返答率の向上に期待を寄せる。メールをよく使う保護者と対話アプリを好む子どもたちをつなぎ、迅速な確認を目指す。

学生情報センターは学校向けに提供している安否確認システムに「LINE」の対話アプリと連動する機能を追加した(京都市)

学生情報センターは学校向けに提供している安否確認システムに「LINE」の対話アプリと連動する機能を追加した(京都市)

(大阪写真部 小川望、山本博文、淡嶋健人、目良友樹)

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