2019年9月20日(金)

大阪響「ばらの騎士」 オペラ若手、オケが育てる(もっと関西)
カルチャー

2018/7/13 11:30
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大阪交響楽団が20日の定期演奏会で、R・シュトラウス作曲の人気オペラ「ばらの騎士」を披露する。通常のオペラ上演と異なり、演技や舞台装置を省いた演奏会形式での上演だ。指揮は若手実力派の川瀬賢太郎(33)に託し、主な歌手にも関西で活動する若手を起用した。若手の成長に期待した布陣で、関西オペラ界の将来を見据える。

リハーサルに臨む指揮者の川瀬賢太郎(左)(6月、大阪市)

リハーサルに臨む指揮者の川瀬賢太郎(左)(6月、大阪市)

指揮者の川瀬賢太郎(C)Yoshinori Kurosawa

指揮者の川瀬賢太郎(C)Yoshinori Kurosawa

■貴族の恋描く

「この休符はまさに感情が動いている瞬間なんです。休みじゃありません!」。川瀬の声がスタジオに響く。6月中旬、大阪市内で開かれた指揮者と歌手による2度目のリハーサルでの一コマだ。この後、同じ箇所を繰り返し歌い、発声を細かく修正する作業を続けた。

「ばらの騎士」は18世紀のウィーンを舞台に、貴族の恋模様を描く。全編だと4時間近い大作で、歌手やオーケストラにとって難曲だ。今回は女声のアンサンブルを中心に、70分ほどにまとめる。

オクタヴィアン役の上村智恵

オクタヴィアン役の上村智恵

主な配役は若手が目立つ。ズボン役(男装)のオクタヴィアンに上村智恵(32)、ゾフィー役に北野加織(32)。いずれも関西を拠点とし、川瀬とも同年代だ。川瀬が「一緒に成長できる仲間のような感覚」と言えば、上村は「譜面の難しさはあるが、音域や色合いなど、さらに良くなっていけそう」、北野は「(川瀬は)自分一人では作り出せない音楽のうねりを引き出してくれる」と述べる。

■視線は10年先

実力派の歌手が何人も必要なのがオペラだ。大阪響の二宮光由楽団長は若手の起用について「現段階で歌える人というより5年後、10年後に関西のオペラ界で柱になってくれる人を選んだ」と理由を明かす。

ゾフィー役の北野加織

ゾフィー役の北野加織

川瀬は29歳で神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就くなど、早くから頭角を現してきた。ここ数年、オペラの場数も踏んでいる。「ばらの騎士」は組曲版の指揮経験はあるが、歌手付きは初めて。「憧れの作品で、振れるのは早くても15年後ぐらいだと思っていた」と川瀬。

二宮楽団長は川瀬について「オペラに向かっていく姿勢が若手の中で際立っている」と高く評価する。元帥夫人役のベテラン、木澤佐江子(49)も「歌うことに目を奪われて見えなかった部分を説明してもらい、音楽が立体的に見えてきた」と、川瀬の解釈の深さに舌を巻く。若者たちの「ばらの騎士」。どんな歌声を聴かせてくれるだろうか。

■演奏会形式 関西で少なく

演奏会形式でのオペラの上演は、演出や演技抜きで純粋に歌と音楽を楽しめるとして根強い人気がある。楽団にとっても歌手との共演は、表現の幅を広げられるなど利点が大きい。

だが、関西で演奏会形式はほとんど上演されていないのが実情だ。昭和音楽大学オペラ研究所によると、国内のプロ楽団主催の演奏会形式は2016年で十数回。大半がNHK交響楽団など関東地区の大規模楽団によるものだ。

舞台装置は不要だが、稽古のため指揮者と歌手を何度も集める必要がある。地方の楽団ほど費用などの負担は重くなる。定期公演では大阪フィルハーモニー交響楽団は大植英次が13年に指揮したのが最後。日本センチュリー交響楽団は「約30年の歴史で5回に満たないほど」(同楽団)。

関西フィルハーモニー管弦楽団はオペラを得意とする飯守泰次郎とほぼ毎年上演してきたが昨年度から演目に挙げていない。大阪交響楽団の演奏会形式は今回、18年ぶりだ。昨年、スポンサーの支援を受け無借金状態となったことで弾みが付いた格好だ。

昨年、読売日本交響楽団(東京)がメシアンの大作「アッシジの聖フランチェスコ」をびわ湖ホール(大津市)などで日本初演し、大きな話題を呼んだ。関東との楽団とのこうした"格差"は広がるばかり。在阪の各楽団は「年間プログラムを検討する際、演奏会形式は必ず話題に上がる」と口をそろえる。大阪響に他の在阪楽団が続くのを期待したい。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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