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国債版ワールドカップ(大機小機)

2018/7/12 17:00
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 いよいよ決勝と3位決定戦を残すだけとなったサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会に、優勝4回を誇るイタリアは出場していない。欧州予選で敗れた昨年秋には、強豪国の60年ぶりの屈辱が大きな話題になった。

 そのイタリアはここ数カ月、世界の金融市場でも話題を集めた。政治の迷走をきっかけとしたイタリア国債不安を震源として、欧州債務危機が再来するのではないかとの懸念が生じたのである。

 2010年代初めに欧州債務危機が起きた当時、筆者は国債評価の目安として経常収支の重要性を議論していた。「国債の評価は、マクロ的に対外バランスの結果として生じ得る海外資金への依存度合いによる」とするものである。折しも南アフリカでサッカーW杯が開催されていたので、この世界市場での評価合戦を「国債版ワールドカップ(W杯)」と称していた。

 10年代初めの欧州債務危機を理解するには、ユーロ統合以降の欧州の対外収支バランス構造が、基本的に二極化する状況にあったことを知る必要がある。ドイツを中心とする欧州北部の経常黒字と、ギリシャなど南欧諸国の経常赤字は、さながら扉が開くかのように拡大していた。

 国債版W杯によって、当該国の国債の市場評価は経常収支の状況で決まる。このため、最も経常赤字が深刻だったギリシャの金利が最も上昇し、ドイツとの乖離(かいり)が広がっていたのである。

 以上を踏まえると、今年にイタリア発で生じた懸念は、10年代初めの欧州債務危機とは根本的に構造が異なることが分かるだろう。10年代の後半は欧州北部の経常黒字が高水準を続ける一方、南欧の債務国も軒並み黒字に転じた。

 8年前の危機の震源地であったギリシャも経常黒字に転換し、被支援国から卒業するに至っている。8年前は赤字だったイタリアも黒字である。その結果、スプレッドが大きく拡大したり、危機が欧州諸国に波及したりする状況ではない。

 国債版W杯に照らせば、欧州債務国よりはるかに財政赤字が深刻な日本の国債利回りが、世界で最低水準を維持している理由も明白だ。黒字を維持できる国力をいかに醸成するかが、日本の生き残り戦略の要諦である。

(玄波)

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