2018年11月18日(日)

サウジ増産へ、地政学リスク増大の死角
米制裁でイラン原油をカバー、原油高止まらず

2018/7/11 19:00 (2018/7/11 22:49更新)
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【カイロ=飛田雅則】サウジアラビアの原油の増産がリスクに直面している。米国の制裁復活でイラン産原油の輸出が抑制される分をサウジが引き受けることで、サウジとイランの対立がさらに深刻になりかねない。トランプ米大統領はサウジに圧力を強めるが、増産には技術的に難しい面もある。米国の要請を受けたサウジの増産は、中東情勢や原油市場に波乱を生み出している。

トランプ氏は各国に対し、11月4日までにイラン産原油の輸入をゼロにしなければ、米国のイラン制裁に違反したとして処罰を科すと圧力をかけている。市場では日量80万~200万バレルのイラン産原油が締め出され需給が逼迫するとの観測が浮上し、原油価格は1バレル80ドルに迫る高値での推移となっている。

トランプ氏は11月の米議会の中間選挙を控え、有権者に不人気なガソリン高を避けたい意向だ。原油価格の引き下げのため、産油国に増産を求めている。増産を主に引き受けるのはサウジになりそうだ。同国は日量200万バレルを超える生産余力を持ち、対イランで共闘する米国の不興を買いたくないためだ。既にサウジ政府は7月上旬、生産余力を活用する準備があると表明している。

ただ、サウジの増産にはリスクも伴う。イラン革命防衛隊高官は最近、イラン産原油が禁輸となれば「我々は原油を運ぶ船舶がホルムズ海峡を通過することを許さない」と語り、海峡を封鎖する可能性を示唆する。

ペルシャ湾とアラビア海を結ぶホルムズ海峡は原油輸送の大動脈で、実際に封鎖となれば、サウジの輸出に支障が出るのは避けられない。原油に依存するサウジにとって死活問題で、イランとの軍事的な緊張が深まるのは確実だ。サウジとイランは断交中でもある。

さらにサウジと他の産油国との結束が揺らぐ可能性がある。サウジが主導した6月の会合で石油輸出国機構(OPEC)加盟国やロシアなど非加盟国は、2017年1月から続ける協調減産を緩めることで合意した。行き過ぎた減産をやめ、産油国全体で日量100万バレルほど生産を増やす。

だが、その後も原油価格は高値が続き、トランプ氏はサウジにさらなる増産を迫っている。合意内容を超えてサウジが産油量を増やせば、原油価格の安定でまとまってきた産油国の結束が揺らぐことにもなる。イランのザンギャネ石油相は「OPECは連帯と独立を失う」とけん制する。

サウジの増産には技術的な難しさもある。11日発表のOPECの月報でサウジの生産量は日量1042万バレルに増えている。この水準から一気に産油量を増やすと、地層に影響を与えかねないとも指摘されている。過去にサウジの産油量が日量1100万バレルを超えたのは一定期間に限られる。

サウジの日量200万バレルほどの余剰生産能力はこれまで世界の約6割を占めてきた。トランプ氏は6月末にサルマン国王と電話会談し、サウジに最大200万バレルの増産を求めたもようだ。

6月時点でサウジは前月に比べ40万バレルほど生産を増やしており、世界の原油市場の余剰生産能力は低下している。新興国の需要が増加するなか、産油国でトラブルが起きた場合、供給懸念が深刻になる恐れがある。

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