2018年7月16日(月)

NATO首脳会議が開幕 トランプ氏、独を痛烈批判
ロシア巡り米欧が亀裂

トランプ政権
ヨーロッパ
北米
2018/7/11 15:20 (2018/7/12 0:51更新)
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 【ブリュッセル=中村亮、森本学】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が11日、ブリュッセルの本部で開幕し、ロシアの軍事的脅威に対抗するための即応体制の強化などを盛り込んだ共同宣言を採択した。加盟国の結束を強調した格好だが、トランプ米大統領は開幕に先だち、ドイツを痛烈に非難。米欧の亀裂は隠せなかった。

 「ドイツはロシアの捕虜のようなものだ」。トランプ氏は11日、開幕に先だつストルテンベルグ事務総長との会談で、ドイツがロシアから天然ガスを大量購入する計画にかみついた。

 ドイツはバルト海の海底にパイプラインを建設してロシア産の天然ガスを輸入する「ノルドストリーム2」計画を進めている。トランプ氏は「我々はロシアに対する防衛をするのに、ドイツはロシアに巨額の資金を支払っている」と非難した。

 12日までの首脳会議の主要議題のひとつが、ロシアの軍事的脅威に対する抑止体制の強化。首脳らは11日採択した共同宣言で、「4つの30」と呼ぶ即応体制の強化策を採択した。機械化大隊30部隊、飛行中隊30部隊、戦闘艦30隻を30日以内に、欧州の必要な地域へ配備できる体制を整備する。

 米欧間の対立が深まる国防費の負担を巡って、共同宣言は4年連続で米国以外の加盟国の国防支出が増えたことを「重要な進展」と評価。一方で「多くの作業が残っている」とも明記し、さらなる支出拡大を求めるトランプ氏に配慮をみせた。

 通商や国防費の負担で米国と対立する欧州だが、対ロ政策では結束しているとアピールしたい。「ドイツもまた米国の国益を守っている」。メルケル独首相は11日、米軍駐留が続くアフガニスタンにNATOで米国に次いで2番目に多く派兵しているのはドイツだと強調。米国が一方的に欧州を守らされているとするトランプ氏に反論した。

 トランプ氏の独批判の背景には、欧州へのガス輸出を拡大させたいとの思惑もにじむが、欧州内の対ロ姿勢の足並みの乱れを突いた面もある。ノルドストリーム2を巡ってはポーランドなどが反対し、欧州のロシアへのエネルギー依存を強めるとの反対論がEU内でも根強いからだ。欧州分断を狙った発言だとの警戒がくすぶる。

 トランプ政権内の対ロ姿勢は定まらない。NATO米代表部のハッチソン大使は10日、記者団に「ロシアは(ウクライナ領)クリミア半島を違法に併合した」と批判。一方、トランプ氏は「オバマ前大統領の責任だ」とロシア批判を避け、クリミア半島でロシア語が話されていることを理由に併合を認めるかのような発言もした。

 見えない米政権の本音が欧州に疑心暗鬼を呼ぶ。トランプ氏は北朝鮮との非核化交渉で譲歩を引き出す前に、米韓合同軍事演習の中止を表明した。NATOは今秋、バルト海などで4万人規模の軍事演習を予定する。欧州側はトランプ氏が対ロ関係改善の取引材料として演習中止を打ち出すのではないかと懸念する。

 「誰が重要な友人なのか。誰が重要な問題を引き起こしているのか。それを知っていることが絶えず大事なことだ」。EUのトゥスク大統領は10日、トランプ氏の対ロ姿勢に苦言を呈した。トランプ氏は欧州の防衛について「すべての面倒は見ない」とも発言し、欧州からの米軍の撤退や縮小を視野に入れる。

 NATOの根幹は加盟国が攻撃を受けた場合には他の加盟国が反撃する集団的自衛権の行使を定めた条約第5条。11日に採択した共同宣言では、米国も含めて第5条の順守を再確認したが、欧州の米への疑念は拭えない。

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