「介護漬け」にAIが歯止め、効率化で自立促す - 日本経済新聞
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「介護漬け」にAIが歯止め、効率化で自立促す

高齢者の身体機能の改善など自立支援に人工知能(AI)が活躍しそうだ。介護大手が出資するスタートアップ、シーディーアイ(東京・中央)は11日、愛知県豊橋市と共同で高齢者の介護計画(ケアプラン)作成にAIを活用する大規模な実証実験を実施すると発表した。介護最大手のニチイ学館NECと同様のAIの研究を進めるなど、介護現場でAIを活用する取り組みが広がっている。

シーディーアイにはセントケア・ホールディングツクイなど介護大手のほか、産業革新機構などが出資する。AIは過去の介護データを元にどういった介護サービスを提供すると症状が改善するかなどを学習。利用者の要介護度など約120項目を入力すると、AIの学習結果に基づき最適なケアプランを3つ提示する。

実験では7月から2019年3月までの約9カ月間にわたり、約50人のケアマネジャー(ケアマネ)が約600人の高齢者のケアプラン策定にAIを活用。豊橋市内のケアマネの約2割、介護サービスを受ける高齢者の1割弱が参加する計算だ。

シーディーアイは豊橋市と17年度も約70人の要介護者を対象にケアプラン作成にAIを3カ月程度使う実験を実施。要介護度の判定のために機械的に推計する、1日あたりの介護にかかる時間(要介護認定等基準時間)の変化を測定した。

一般的に時間がたてば症状が進み、介護にかかる時間も長くなるが、AIを活用して作成したケアプランを元に介護サービスを受けた高齢者は時間が短縮。豊橋市の過去の介護データと比較したところ、「要介護3」以下の高齢者の場合、約4%時間が短くなっていたという。

介護現場は従来、介助中心で要介護度を改善させる自立支援型の介護は浸透しておらず、高齢者がある種の「介護漬け」になってしまう場合も多かった。介護利用のコストは、高齢者本人の支払いは1~2割で残りは自治体や国のほか、企業や現役世代らの保険料で賄っている。

高齢者・要介護者が急増する中で負担が膨らむのをどう抑えるかが課題だ。国は介護給付費の抑制に向け、要介護度の改善を促す自立支援型の介護を推進する。AIの活用はケアマネの負担軽減など業務効率化のほか、介護給付費の抑制に向けた効果も期待できる。

ケアプランの策定にAIを活用する取り組みは広がる。ニチイ学館はNECと共同でケアプラン作成にAIを使う研究を進める。関西を中心にデイサービス施設を展開するポラリス(兵庫県宝塚市)はパナソニックと連携し、2月からAI活用の実証実験を始めた。

介護関連スタートアップのウェルモ(福岡市)はケアプラン作成用のAIを開発。18年夏から介護事業者向けに試験提供を始めるほか、介護事業所向けシステムのロジック(金沢市)は金沢工業大学と組んで同様のAIの開発を進めるなど、ケアプラン作成を支援するAIの開発競争が進む。厚生労働省はケアプラン作成用のAIの効果や課題などを検証する初の全国調査を18年度内に実施する見込みだ。

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