2018年7月23日(月)

20万都市の広島・呉 物流滞る、鉄道運休や道路寸断

西日本豪雨
社会
2018/7/11 11:55
保存
共有
印刷
その他

 西日本を襲った記録的な豪雨で、22万6千人が暮らす広島県呉市は一時「陸の孤島」となった。周囲の自治体に続く鉄道が運休し、土砂崩れや陥没で主要道路も寸断。一部の道路は復旧したが、市外に出るフェリーは通勤客らで混雑し、スーパーは品薄状態となった。売り切れで営業を停止したガソリンスタンドは再開したものの、市民生活への影響が続いている。

山に囲まれた広島県呉市の市街地。河口は流れ出す泥で濁っていた(9日)

スーパーは品薄状態(10日、広島県呉市)

 11日朝、呉市の呉港。広島港に向かうフェリー乗り場には通勤客らが列を作っていた。運航する瀬戸内海汽船の担当者は「広島市には車や電車で向かう人がほとんど。想定外の利用」と話す。

 広島港と呉港を結ぶフェリーは1日に31便で、乗船できるのは1日最大約8千人。6日に大雨の特別警報が出て週が明けた9日から通勤や買い物の利用者で混雑が始まり、満席となることもあったという。同社は10日から通勤時間の便を1便増やして対応している。

 呉市周辺は6日以降、JR呉線の運休が続き、広島市方面に続く国道31号や有料道路「広島呉道路」、北側の東広島市に向かう国道375号など主要な道路が土砂崩れで通行止めとなった。

 ツイッター上では「呉を脱出したいけどフェリーも満席」「車も大渋滞で呉から出られない」といった投稿が相次いだ。11日までに一部道路は復旧したが渋滞が発生し、市の担当者は「すべての国道が復旧するメドは立っていない」と話す。

 物流が滞り、スーパーではパンや米、肉類など品薄の状態に。会社員の日高昇さん(58)は冷凍食品や梅干し、つくだ煮とご飯でしのぐ日々。10日はパンを買うため5店を回ったが見つからず、「食料も尽きてきた」。

 近所の人にカップ麺や缶詰を分けてもらっているという無職の吉森隆司さん(67)は空きスペースが目立つスーパーの陳列棚を前に「いつになったら品物が戻るのか」とため息をついた。

 呉市中心部のガソリンスタンド。6日時点で約1万リットルが残っていたが8日までにほぼ完売し、9日から「在庫切れのため閉店」との看板を立てて臨時休業した。道路の復旧を受け、11日朝にようやく約2万リットル届いた。客から再開の問い合わせが相次いでいたといい、店長の河村隆司さん(47)は「ようやく再開できる」と胸をなで下ろした。

 呉市への支援物資の輸送を検討していた国土交通省は「混乱が続く陸路では支援が間に合わない」(担当者)と判断。同省の大型船に、非常米2万食や飲料水2万5千本、紙おむつといった生活用品を積み込み、10日深夜に大阪・堺港を出発した。11日夕に呉市に到着する見通しという。

 東北大災害科学国際研究所の奥村誠教授は「水害で小さな集落の孤立はあるが、大規模な市の物流が滞るケースは珍しい」と指摘。瀬戸内海に面し、三方を山に囲まれた呉市の市街地の地形に触れ、「山あいを通る道路が多いことが交通網を一斉にマヒさせる事態を招いた一因。災害に備え、遠回りでも安全な道路を建設しておくなどの工夫が求められる」と話した。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報