2018年10月22日(月)

「処方薬もオンライン」これで広がる? 特区で実験

2018/7/10 16:57
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調剤薬局に行かなくても、インターネットで薬剤師が処方薬の飲み方を教えてくれる「オンライン服薬指導」が本格的に動き出した。愛知県の国家戦略特区で調剤薬局最大手のアインホールディングス(HD)が10日、説明会を開いた。遠隔医療への一歩だが課題は多い。

愛知県の特区で始まったオンライン服薬指導の様子(10日、同県岡崎市)

■iPadで薬剤師と会話

「お薬はまだ残っていますか」「ぜんそくの発作が出なくても継続して服用してください」――。

調剤薬局でよく目にする場面だが、薬剤師がいるのはカウンターの向こうではなく「iPad」の画面の中だ。アインHDなどが取り組むオンライン服薬指導は、ビデオ通話を使って薬剤師が服薬の説明をする。

本来は対面での説明が必要だが、特区ではこれだけでOK。薬は自宅に郵送してもらえる。近所に薬局がなく、1人で移動するのが難しい高齢者の負担が軽くなる。

遠隔医療はすこしずつ進んでいる。4月の診療報酬改定で、継続して治療を受けているかどうかなど「オンライン診療」を受けられる条件が示された。これにより利用は進んでいるという。最近では1000以上の医療機関でシステムが導入されているという。

ただ薬を処方してもらう場合は、処方箋を郵送してもらった患者が薬局に出向かなければならないなど、サービスは画竜点睛(がりょうてんせい)を欠いていた。今回の愛知県の特区ではまずオンライン診療を受けている患者を対象に、服薬指導も遠隔でできるようにした。6月下旬に特区での取り組みが始まってから、実際に活用する患者も出ているという。

■矛盾する「条件」

一方で普及には障壁があることも事実だ。まず、利用の条件が厳しい。今回の特区は愛知県全体だが、オンライン服薬指導を受けるためには「居住地から16キロメートル圏内に調剤薬局がない」という条件がある。一方、オンライン診療(保険対象)には「緊急時に30分で行ける範囲に医療機関がなければならない」といった規定がある。

「薬局は近くにあってはだめで、病院は遠くてはだめと、一見相互矛盾している」(関係者)。トラブルなどで使えなくなった場合の予備手段を担保する必要はあるが、ある医療関連スタートアップの担当者は「特区の条件の決まり方がわかりづらく、IT(情報技術)を使った解決策の提案もできない」と嘆く。対象になる病気も限られており、皮膚科や花粉症などは外れている。別の関係者は「こんな厳しい条件の特区で患者が見つかったのが奇跡的だ」とこぼす。

スマートフォンやタブレットを使うことが前提になっているのも壁だ。利用者の大半は高齢者であるため、ビデオ会議のアプリを入れたり、個人情報の入力に手間取ったりして途中で断念してしまう、といった声がある。

米国ではネットで処方薬を購入することがすでに可能だ。処方薬のインターネット販売を手掛けるピルパックのようなスタートアップも台頭。米アマゾン・ドット・コムは6月、同社を買収すると発表している。一方日本でネット購入できるのは大衆薬に限られている。

オンライン服薬指導は治療を中断する人を減らすという大きな目標に向かって前進したが、ゴールはまだ遠い。

(諸富聡、池下祐磨)

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