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最後に勝敗分けたクロアチアのタレント力

至言直言 清水秀彦

ロシアをPK戦の末に破り、一斉に駆け出すクロアチアのイレブン=三村幸作撮影

クロアチアとロシアの試合では、互いの戦術的な変化が随所に見られた。結果的にはPK戦にまでもつれる死闘となったが、途中までは状況に応じた両国の腹の探り合いを楽しめた。

強豪スペインを倒した決勝トーナメント1回戦では5バックを敷き、引いて守る印象が強かったロシアだが、今回は4バックに戻し前線からプレッシャーをかけていった。一番前のジュバにボールを集め、こぼれ球をゴロビンらが拾うことで、クロアチアのDFを押し下げることに成功した。

ばたつく相手の隙を突いて先制点をもぎ取ったが、時間が予定より早すぎたのだろう。そこからさらに前へ攻めるのか、引いて守るのか曖昧になった。SBが何度か上がりかけたところを引っかけられ、逆に攻め込まれてあっという間に同点とされてしまった。

クロアチアは主将のモドリッチを前の試合より1列下げて臨んだが、ロシアの変化に面食らい、かえってモドリッチが右往左往してボールに触れない時間が続き失点につながった。そこで後半途中、クラマリッチを1列下げ、モドリッチとラキティッチを前へ上げると、2人にボールが収まるようになり、攻撃のリズムをつかんでいった。

スコアは2-2だったが、タレント力がもたらす戦い方の差は大きかった。ロシアはジュバを途中でベンチに下げたことで2点目を取る力が激減。勝ち越された後、ホームのアドバンテージと団結力で何とか土壇場で同点には持ち込んだが、後半は終始クロアチアに振り回され、へとへとになっていく姿が目立った。

クロアチアも前の試合でPK戦にもつれた影響からか疲労の色が濃く、モドリッチとラキティッチのコンビネーションは十分でなかった。とはいえR・マドリードとバルセロナという、ビッグクラブの2人を、随時システムを変更しながらうまく生かしていた。持てる力を全て出し切って得た勝利といえるだろう。

準決勝で当たるイングランドは今大会のダークホース。ケーン、スターリングが持ち前の速さで引っぱり、セットプレーで決めるという定型が確立されている。チーム全体を見ても国内リーグの選手のみで構成され、若く、勢いがある。

ただ、経験値やオプション数を見れば、クロアチアのほうに分があるのではないか。イングランドはこれまで対戦相手に恵まれてきた印象で、戦い方をほぼ変えていない。ボールの回収役のヘンダーソンがクロアチアの要の2人に引っぱられたとき、対応力があるかは疑問だ。

もちろん、PK戦を2度戦って疲労困憊(こんぱい)のクロアチアにとって、その若さと勢いは脅威でもあるのだが。

(元仙台監督)

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