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ネイマールよ 自らのあり方を見つめ直そう

サッカージャーナリスト 沢田啓明

ゴール前に立ちはだかるベルギーの高くて厚い壁に跳ね返された=沢井慎也撮影

サッカーのワールドカップ(W杯)準々決勝ベルギー戦で、ブラジルは攻めても攻めてもゴール前に立ちはだかる"赤い悪魔"たちの高くて厚い壁に跳ね返された。シュート数がブラジル26、ベルギー8という数字が示す通り、試合内容では優勢だったが、ゴールが遠かった。過去20回のW杯で5回優勝し、4強以上の成績を残したのが計11回を数えるブラジルにとって、準々決勝敗退は最悪の成績に等しい。

個人的には、このチームは優勝するだけの力があると考えていた。W杯南米予選を圧倒的な強さで突破し、その後の欧州遠征でドイツ、クロアチア、ロシアなどを倒した。大会直前の準備も順調だった。2月末の試合で右足首を骨折し、手術を経てリハビリを続けていたエース・ネイマール(パリ・サンジェルマン)の体調が心配されたが、結果的にチームの全試合でフル出場した。

1次リーグでは初戦で堅守スイスと引き分け、コスタリカには苦しんだが追加タイムのコウチーニョ(バルセロナ)とネイマールの得点で勝ち切った。そして、セルビア戦では伸び伸びとプレーして快勝。決勝トーナメント1回戦でもメキシコに力の差をみせつけ、勢いに乗ったようにみえた。

敗因、技術面ではなく精神面に

ベルギー戦ではアンカーのカゼミロ(レアル・マドリード)が累積警告のため欠場し、フェルナンジーニョ(マンチェスター・シティー)が先発。2014年大会の"生き残り"の一人だが、前半、CKから彼のオウンゴールで先制を許し、さらに自分たちのCKから驚異的なスピードのカウンターを浴び、デブルイネ(同)にミドルシュートをたたき込まれた。空中戦とカウンターで失点というのは決勝トーナメント1回戦で日本がやられたのと同じパターン。終盤、1点を返したが及ばなかった。

ただ、この試合の最大の敗因は後半、多くの決定機をつくりながらネイマール、コウチーニョ、レナトアウグスト(北京国安)らが決め切れなかったことだろう。その理由は、技術面ではなく精神面にあったと考えている。

コスタリカ戦の後半もそうだったが、ネイマールがパスやシュートのミスを連発し、彼がいら立ちをあらわにしたことが他の選手にも伝染してミスの連鎖を引き起こしていた。前回大会の準決勝でドイツに歴史的大敗を喫し、4年をかけてそのショックから立ち直ろうとしてきたが、選手たちはあのトラウマを払拭できていなかったのかもしれない。

W杯南米予選でチーム最多の7得点を挙げた21歳のガブリエルジェズス(マンチェスター・シティー)は奮闘したが、5試合で無得点。ビリアン(チェルシー)も調子の波があった。また、大会直前に故障して欠場を余儀なくされた右SBダニエウ・アウベス(パリ・サンジェルマン)の穴が完全には埋まらず、攻撃が左サイドに偏っていた。

この大会の収穫は高い位置からの守備が機能し、5試合で3失点と安定していたこと。この堅守をよりどころに、攻撃的なスタイルを貫いた。対戦相手から徹底的に研究されており、最大の強みであるカウンターはほとんど封じられたが、それでも何とか相手ゴールをこじ開けた試合が多かった。

がむしゃらにゴール目指したか

代表がW杯で敗退すると、いつもブラジルではメディア、国民から監督や主力選手が痛烈に批判される。しかし、今回はやや事情が異なる。約2年前に監督に就任したチチ氏はチームに確固とした戦い方を植えつけ、選手起用も適切で、通算成績は26戦して20勝4分2敗。監督への批判はほとんど聞こえてこない。ブラジルを倒したベルギーが攻撃的で創造的なプレーをするブラジル人好みのチームだったことで、「あの相手に負けたのなら仕方がない」という空気も感じられる。ただし、がむしゃらにゴールを目指すよりはシミュレーションをしてPKをもらうことを優先し、自らのミスにいら立って自滅したネイマールに対しては厳しい目が向けられている。

ブラジル国民からはネイマール(中)に厳しい目が向けられている

ブラジルサッカー連盟は、チチ監督にW杯後も引き続き采配を振るうよう要請する考えを表明。国内メディアもチチ監督の指導力を高く評価しており、本人が承諾するようなら今後はさらに優れたチームをつくることが期待できる。

今後、35歳のダニエウ・アウベス、ともに33歳のミランダ(インテル・ミラノ)とチアゴシウバ(パリ・サンジェルマン)らは代表から引退する可能性が高い。守備陣では24歳のCBマルキーニョス(同)と26歳のカゼミロ、攻撃陣ではともに20代中盤のネイマールとコウチーニョが中心となるはずだ。

心配なのはネイマールだ。今回のW杯で2得点を挙げたとはいえ、彼の能力からすれば物足りない。今後はピッチ内外の言動を含めて自らのあり方を振り返り、選手として、人間としてさらに成長する必要がある。ブラジル代表が一人の選手に依存すべきではないが、彼の振る舞いとプレーがチームに大きな影響を及ぼすのは間違いないのだから。

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