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エンゼルス、性急な大谷復帰に託したもの
スポーツライター 丹羽政善

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2018/7/9 6:30
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米国のチームスポーツでは度々、ある一人の選手が加わることで、チーム状況に変化が見られることを「Chemistry(ケミストリー)」という言葉を用いて表現する。直訳すれば「化学」だが、この場合、「相性」という解釈が正しい。新しく加入した選手とすでにいる選手との相性はどうか、というわけだ。

たとえばその選手が和を乱すようなタイプで、チームの中にギスギスした空気を持ち込み、負けが込むようなことになるなら「バッドケミストリー」。簡単にいえば、悪影響をもたらしていることになる。逆にその選手が加わったことで、チームのムードが変わり好結果が表れるようなら、それは「グッドケミストリー」。その選手が入ることでいい刺激が生まれ、それが相乗効果を生む。

わかりやすい例が、2001年のイチローとマリナーズではないか。あの年、打線の軸だったアレックス・ロドリゲス(現解説者)が抜けるなどし、チーム力低下が懸念されていた。前年は91勝を挙げてプレーオフに出場したが、よくて現状維持。そもそもイチローでは懸念だった1番打者の穴は埋まらない、との見方は少なくなかった。

ところが、シーズンが始まってみれば連戦連勝。開幕戦からセンセーショナルな活躍を続けたイチローにつられるように、多くの選手がキャリアハイの数字を残し、チームは大リーグ記録タイとなるシーズン116勝をマーク。イチローはチームのケミストリーに劇的な変化をもたらした。

大谷は「グッドケミストリー」

大谷翔平とエンゼルスに目を転じれば、今季序盤、やはり同じような効果が見られた。

キャンプではマイナー調整の可能性さえ報じられた大谷だったが、シーズンに入った途端、打席でもマウンドでも多くの予想を大きく上回る活躍。投打の「二刀流」を疑う声を消した。それに伴ってチームも勝ちを重ね、開幕から16試合を終えた時点で13勝3敗はフランチャイズ史上最高の好スタート。その時点で大谷は打者として8試合に出場し、打率3割6分7厘、3本塁打、11打点。投手としては2試合に先発して2勝0敗、防御率2.08、18三振(13イニング)。開幕ダッシュの原動力は紛れもなく大谷だった。

ただ、そんな勢いも大谷のバットが湿り始めて、ブレーキがかかる。

大谷が打者として出場した最初の20試合(3月29日~5月11日)は打率3割4分8厘、5本塁打、16打点。得点に密接な関わりがあるOPS(出塁率+長打率)は、0.8を超えれば優秀という目安に対して1.044という驚異的な数字をマークした。その間のチームの1試合平均得点は6.15点で、勝敗は13勝7敗だった。

ところがそれ以降は――。5月15日から6月6日の登板後に右肘に張りを訴え、靱帯の損傷が発覚するまでの14試合は打率2割、1本塁打、4打点、OPS0.701。その間のチームの1試合平均得点は4点ちょうど。勝敗は6勝8敗だった。

それでもまだ、大谷がラインアップに名を連ねている限りは大崩れしていない。さらに大谷の場合、投手としても貢献。5月以降、5試合に先発して3点以上を取られたことがなく、チームを下支えしていた。

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