2018年9月23日(日)

着々と進む「アマゾン銀行」誕生への布石

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2018/7/9 6:30
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 例えば、アマゾンのVC、Alexa Fund(アレクサファンド)は17年12月、若者向けに代替デビットカードを発行する米Greenlight Financial Technology(グリーンライト・ファイナンシャル・テクノロジー)の資金調達(調達額1600万ドル)に参加した。グリーンライトのカードでは、親が利用限度額を管理し、モバイルアプリを通じて子どもにお小遣いを渡すことができる。グリーンライトは18年3月、利用者が10万人を突破したことを明らかにした。

グリーンライトの商品の形態

グリーンライトの商品の形態

 まだ何の計画も発表されていないが、アマゾン・キャッシュはグリーンライトのカードをアマゾン・アローワンスに連携し、アローワンスが使える場所を拡大したいと考えている。

 銀行口座を持たない人をターゲットにしたアマゾン・キャッシュは、海外での商機も大きい。例えば、インドでは銀行口座を持たない人は1億9000万人に達し、メキシコでは口座を持つ成人は全体の37%にとどまる。アマゾン・キャッシュはこういった市場での顧客獲得の切り札になる。

 今後はどんな手を打ってくるだろうか。例えば、ショッピングモールや大学、食料雑貨品店といった人の出入りが多い場所や、銀行口座の保有率が低い地域にアマゾン・キャッシュを拡大するかもしれない。ホールフーズに設置するコインスターの両替機を増やすかもしれない。

 アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、金融サービスの中でも特に融資事業の開拓に積極的だ。

 ベゾス氏は16年の株主への手紙で、中小事業者向けローン「アマゾン・レンディング」を拡大する構想について説明した。提携銀行と共に融資の大半を管理することで信用リスクを下げ、投資家の不安も和らげることができる。

 アマゾンは現在、米国、英国、日本、インドに加え、提携カードの形態で米消費者にも融資サービスを提供している。

 アマゾンがプライムカードを提供するのは、プライム会員を増やし、ネット通販の売り上げを伸ばすという2つの企業目標を達成したいからだ。クレジットカード保有者にプライム加入を促すために、プライム会員限定の特典も設けている。クレジットカード保有者は非保有者よりもサイトでの利用額が多い傾向があるため、カードを提供すればネット通販にも恩恵が及ぶ。

 アマゾンは5月、プライムリワーズ・ビザカードでの5%キャッシュバックの対象店舗をホールフーズにも拡大した。これはプライム会員向けの特典や専用メリットを拡充してカードの競争力を高め、アマゾンのサイト利用者を取り込む策の一例だ。

 さらに、アマゾンのビザ提携カードには、用途が限定される流通系カードではなく、日常的に使われるカードにしたいとの狙いが透けて見える。

■金融の次の柱は?

 アマゾンは決済、キャッシュ、融資などに進出する一方、金融サービスのエコシステムをさらに拡大しようとしている。第1が「決済専用口座」だ。

 3月には、アマゾンがJPモルガンやキャピタル・ワン・ファイナンシャルなどの銀行と当座預金口座に似たサービスについて協議していることが報じられた。

 アマゾンが主にアマゾン・キャッシュを通じてこのサービスを進めようとしていることがうかがえる。04年にはアマゾンのアカウントを銀行の口座情報やプリペイドカードと連携させる手段で特許も取得している。

04年に取得した特許からうかがえる決済口座サービス

04年に取得した特許からうかがえる決済口座サービス

 さらなる展開は明らかにされていないが、このニュースをきっかけにアマゾンがついに銀行業に参入するのかを巡って議論が巻き起こっている。

 第2が「保険」だ。アマゾンは正式には保険事業に参入していないが、保険市場や商品に関心を示し始めている。

 16年4月には英国で他社リソースを活用した初の保険「アマゾン・プロテクト」に乗り出した。ヘッドホンからキッチン家電に至る消費者向け製品が事故や盗難にあった際の被害を補償する。保険金の請求は、延長保証サービスを手がける米The Warranty Group(TWGワランティサービス)のLondon General Insurance Company(ロンドン・ゼネラル・インシュランス・カンパニー)が引き受ける。このサービスはスペイン、イタリア、ドイツ、フランスなど他の欧州諸国にも拡大されている。

 TWGは18年6月、米保険会社Assurant(アシュラント)に推定25億ドルで買収された。これにより、アシュラントが展開する新たな市場にアマゾンのサービスを拡大しやすくなった。

 一方、アマゾンは18年5月、インドの保険フィンテックAcko(アッコ)の1200万ドルの資金調達を主導し、同国の保険市場にいち早く参入した。アッコは自動車や二輪車を対象にした従来型の保険を提供する一方、ネット通販、旅行、配車アプリ専用の商品など「インターネット経済」を対象にした保険にも力を入れている。

 アッコのヴァルン・ドゥアCEOはアマゾンからの出資について「将来の連携手段を見いだすのが出資の狙いだ」と話す。

 アマゾンの金融戦略は、同社のサイトの参加者を増やすという戦略の実現に重きを置いている。

 実際、アマゾンは金融サービスを拡充するために、提携やM&A(合併・買収)、投資よりも社内での商品開発に力を入れている。フェイスブックやマイクロソフト、グーグルといったライバルがM&Aや投資に積極的に励んでいるのに比べると、驚くべき戦略といえるだろう。

 少し引いた視点で捉えると「アマゾン銀行」の初期の形態が見えてくる。アマゾンのサイト参加者を支え、どのプラットフォームよりも簡単に売買や取引ができる金融商品がそろっている。

 従来の銀行が懸念すべきは、このアマゾン銀行の潜在力だ。過去の例に従えば、アマゾンはまず唯一かつ最も重要な顧客である社内向けに中核商品を開発する。クラウドサービスの可能性について社内で徹底検証した後に、これを社外の顧客や第三者向けに転用したAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)がまさにそうだ。何年もかけて商品を開発し、その機能を社内で繰り返し試してから、アマゾンはようやく他の顧客に中核商品の提供を開始し、詳細を明らかにするのだ。

 その頃には、何の手も打って来なかった既存各社はもはや追い付けないだろう。

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