2018年11月13日(火)

着々と進む「アマゾン銀行」誕生への布石

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米巨大ITへの逆風
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コラム(テクノロジー)
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2018/7/9 6:30
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ところが、アマゾンは15年10月、このサービスを打ち切ると表明した。手数料は割安でも、小売り各社がアマゾンに事業全体の詳細なデータを渡すことを不安視したため、利用は伸びなかった。

失敗に終わったアマゾンの決済システム

失敗に終わったアマゾンの決済システム

アマゾンは結局、モバイル向けに「アマゾンで支払う」というボタンを設け、ウェブやアプリでの決済サービス拡大をめざしてチームを新設した。

このチームのリーダーには、ペイパルの社員だったパトリック・ゴーチエ氏を充てた。ゴーチエ氏は失敗に終わった決済サービスについて「成功の秘訣は、どう転ぶか分からなくてもやってみることだ。成功する方法が分かったら、再挑戦すればいい」と語った。

■アマゾン・ゴーは決済サービスの秘密兵器か

商品開発はアマゾンの得意分野だ。特に無人コンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」では、社員を対象に生体認証を使った決済技術を繰り返し試している。

「Just Walk Out(歩き去るだけ)」と名付けられたこの技術は、コンピュータービジョン、センサーフュージョン、最先端の機械学習を駆使することで、スムーズな決済を実現。アマゾンが特許を持つ技術が活用されている。

アマゾンによる決済の未来 画像解析でユーザーを認証

アマゾンによる決済の未来 画像解析でユーザーを認証

「Just Walk Out」はアマゾンアプリで利用できる。これを使って入店し、店内で商品の会計を済ませることなく店から出ることができる。

この技術はまだ試験段階だが、アマゾンは年内にさらに6店舗をオープンする計画だ。同社は通常、特許を取得した技術を営利目的には使わないが、これを傘下の米食品スーパー、ホールフーズ・マーケットに適用しようとしても驚きではないだろう。

アマゾンのサービス「アマゾン・キャッシュ」は、クレジットカードやデビットカードで決済するネット通販と、現金や金券などの「代金引換」が主流の実店舗との隔たりを埋めるサービスだ。

このサービスは17年4月にスタートした。紙に印刷するかオンライン画面でバーコードを示すことで、米ドラッグストア大手CVSやセブンイレブンなどの提携店舗で現金をチャージできる。手数料はかからない。

アマゾン・キャッシュは現金チャージ方式のサービス

アマゾン・キャッシュは現金チャージ方式のサービス

アマゾン・キャッシュは銀行口座を持たない層を取り込もうとするアマゾンの戦略にぴったり合う。銀行口座や電話番号がなくても、ネットとプリンターが使えればアカウントを開設できる。

米連邦預金保険公社(FDIC)の最新の調査によると、米国で銀行口座を持たない層は3350万世帯に上ると推定される。アマゾン・キャッシュが導入されるまで、こうした層はアマゾンのネット通販を利用できなかった。

アマゾンはこのサービスの導入後、次の年表で示したような中核商品を展開している。

アマゾン・キャッシュの進化

アマゾン・キャッシュの進化

アマゾン・キャッシュは18年5月、小銭両替機を展開する米Coinstar(コインスター)との提携を拡大。余った小銭をコインスターの両替機に入れると、紙幣や金券と交換するのではなくアマゾン・キャッシュのアプリにチャージできるようになった。

両替機の主な設置場所である食品スーパーは、ホールフーズの買収に伴いアマゾンの新たな事業基盤になっている場所だ。両替機は米ウォルマートなどライバルの店舗がある人通りの多い場所にも置かれている。この提携は顧客にアマゾンのサイト利用を促せる上に、同社のエコシステムを強化し、参加者を増やすという戦略の柱にも合致する。

コインスターが大型店や金融機関などに設置している両替機は2万台近くに上る。年内に5000台でアマゾンの新サービスを導入し、利用が順調なら対応台数を増やす可能性がある。

アマゾンはアマゾン・キャッシュの機能を活用し、銀行口座を持たない層に加えて次世代の消費者も取り込もうとしている。

同社は15年半ば、子ども向け決済サービス「アマゾン・アローワンス」を投入した。これは現在、アマゾン・キャッシュの付帯サービスとなっている。親の同意があれば、子どもはアマゾンで自分のアカウントを作成し、アマゾン・アローワンスを使って買い物ができる。親は子どものアカウントに定期的に資金を振り分け、子供の買い物に目を光らせるコントロール機能を追加できる。

アマゾンはさらに、子どもが同社のサイトにアクセスしやすくすることにも資金を投じている。

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