2018年7月16日(月)

着々と進む「アマゾン銀行」誕生への布石

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2018/7/9 6:30
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CBINSIGHTS

 ネット通販の王者、米アマゾン・ドット・コムが放つ「アマゾン・エフェクト(効果)」は今やインターネットの中だけにとどまらない。米高級スーパーのホールフーズを買収し、無人コンビニの「アマゾン・ゴー」も話題を呼んだ。アマゾンがさらなる「経済圏」の拡大に向けて着々と強化を進めているのが金融分野だ。やや地味な取り組みの積み重ねだがその全貌を分析すれば、近い将来に「アマゾン銀行」が金融業界を揺るがす可能性は否定できない。

 米ベンチャーキャピタル(VC)大手Andreesen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のゼネラルパートナー、アレックス・ランペル氏は2月、金融サービスに本格参入する可能性があるIT(情報技術)大手を列挙した。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載しています。

 「最も手ごわいのはアマゾンだ。同社が低金利ローンや銀行口座の開設などに乗り出せば、サイトの売り上げはさらに増えるだろう」

 ランペル氏はこう分析する。実際、アマゾンの銀行業参入の観測は年々強まっている。

 CBインサイツが調べた範囲では、アマゾンが次世代の銀行を築きつつあると断言するのは難しい。だが、アマゾンが「自らのエコシステム(生態系)への参加者を増やす」という戦略の柱となる金融商品の開発に力を注いでいるのは明らかだろう。

 アマゾンは次の点を目標に掲げ、その達成に向けた手段を構築している。

1、アマゾンのサイトの出店業者と、各業者の売り上げを増やす

2、アマゾンのサイトの顧客と購入額を増やす

3、売買をさらに円滑にする

 アマゾンは同時に、金融とITを融合させた「フィンテック」関連の企業にも投資している。投資先の大半はインドやメキシコなどの海外市場だ。

 こうした商品開発や投資判断は、アマゾンには万人を対象にした従来型の銀行をつくる意思がないことを示している。むしろ、銀行のエッセンスを採り入れた上で、これをアマゾンの顧客(出店業者と消費者)向けにアレンジしているのだ。

 アマゾンは自社のための銀行を築きつつあるといえるだろう。預金を保有する銀行に参入するよりも説得力がある。

アマゾンの金融サービス一覧

アマゾンの金融サービス一覧

 アマゾンは新商品を導入するまでに入念に予防線を張ることで有名だ。金融サービスも例外ではない。同社は試行錯誤を経て、決済や現金チャージ、融資という金融サービスを築いてきた。

 ここ数年は特に「決済」に積極投資している。決済システムの使い勝手が中核事業のネット通販と密接に関連していることを考えれば、当然だろう。

 アマゾンの最新の決済サービス「Amazon Pay(アマゾンペイ)」は、顧客向けのデジタルウォレットと、オンラインとオフラインの小売業者向けの決済網の双方を備えている。もっとも、同社は決済システムについて10年以上にわたり試行錯誤を繰り返してきた。下の年表はアマゾンペイの進化の軌跡だ。

アマゾンペイの進化

アマゾンペイの進化

 アマゾン初の決済サービスとされる「Pay with Amazon(ペイ・ウィズ・アマゾン)」は2007年に導入された。同年にはモバイルでの個人間決済サービスを提供する米TextPayMe(テキストペイミー)を買収し、11年にこれを「Amazon Webpay(アマゾン・ウェブペイ)」としてリニューアルした。

 ただ、ウェブペイは定着せず14年に打ち切られた。アマゾンで個人間決済を始めるのは時期尚早だったようだ。

 アマゾンは07年、米Bill Me Later(ビル・ミー・レーター、正式名称は14 Commerce)にも出資した。ビル・ミー・レーターはフィンテックの決済プラットフォームの草分けで、小売り大手は同社のシステムのおかげで柔軟な融資サービスを提供できた。ビル・ミー・レーターは08年にペイパルに買収されたが、アマゾンはその後も顧客の決済をスムーズにすることに力を注いできた。

 ここ数年は、アマゾンペイを通じたデジタルウォレットの導入、経営破綻した米モバイル決済スタートアップGoPago(ゴーパゴ)からの人材獲得、社内での開発など様々な技術を駆使し、決済サービスの向上に取り組んでいる。

 現在のアマゾンの決済サービスは、顧客向けのデジタルウォレットと、オンラインとオフラインの小売りや買い物客向けの決済網を兼ね備えたアマゾンペイだ。

 これは魅力的な収益を得られる分野だ。加盟店が支払う手数料だけでも銀行やカード会社、決済処理会社が得る収益は年間900億ドルに上る。

 アマゾンは加盟手数料の軽減に取り組むだけでなく、アマゾンペイの決済網に小売り各社を取り込む策も模索。大口顧客のアマゾンがカード会社から得た手数料の特別割引を、アマゾンペイを採用した小売りに振り向ける方針を明らかにした。スケールメリットと低料金はアマゾンの顧客獲得戦略の常とう手段だ。

 アマゾンは顧客の伸びや経営指標を公表しないことで知られるが、16年のアマゾンペイの利用者は170カ国・地域の3300万人に上ったことを明らかにした。サービスをフランス、イタリア、スペインにも広げ、政府の支払いや旅行、保険、娯楽、慈善寄付などの分野でも使えるようにしたことで、アマゾンペイを使った決済は急増した。

 もっとも、アマゾンペイでは失敗も犯している。最も有名なのは、中小企業向けの決済サービス「Amazon Local Register(アマゾン・ローカル・レジスター)」だ。このサービスはゴーパゴから獲得した人材を起用して14年8月にスタートした。当時は競争力のある手数料を課し(スクエアよりも丸々1%安かった)、カードリーダーの価格も1台10ドルだったため、ペイパルやスクエアの強力なライバルになるかと思われた。

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