2019年9月22日(日)

「事件まだ終わらず」 地下鉄サリン23年で死刑執行

2018/7/6 11:44
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オウム真理教の元代表、松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、63)の刑が6日執行された。死者13人、負傷者6千人以上を出した地下鉄サリン事件から約23年4カ月。教祖の松本死刑囚が真相を明らかにする機会はついに訪れなかった。一連のオウム事件の遺族や被害者は「事件は終わっていない」「真相解明の努力を」と訴えた。

公証役場事務長拉致事件で亡くなった仮谷清志さん(当時68)の長男、実さん(58)は6日午前、取材に応じ「松本死刑囚が今後も一連の事件の真相を話すとは思えなかった。オウム裁判が終結しておおむね半年での死刑執行は適正だったと思う」と振り返った。

父の死の真相を知ろうと、井上嘉浩死刑囚(48)ら教団元幹部らの公判を傍聴したり、拘置所で中川智正死刑囚(55)と面会したりしてきた。しかし納得できる理由が明らかになることはなかった。その2人もこの日、松本死刑囚らとともに死刑が執行された。

「井上死刑囚は父の最期の場面を知らない可能性が高いと感じていたが、中川死刑囚からはもう少し話を聞きたかった。ただ死刑囚のため面会できる可能性が少ないことも理解しており、執行自体は覚悟していた」と淡々と話した。

「死刑が執行されても、被害者が受けた悲しみや苦しみが癒やされるわけではない」。1995年の東京都庁小包爆弾事件で重傷を負った元都庁職員、内海正彰さん(67)はテレビのニュースで死刑執行を知った際、「ああ、そうかと思っただけ。特別な感情はわかなかった」と話す。

事件で左右の指計6本を失い、障害者となった。自分でネクタイも結べず、生活や仕事で不便を常に感じてきたが「オウムを恨んでも苦しむだけと思い、なるべく考えずに生きてきた」という。

ただ「死刑となった松本死刑囚らが、今も信仰している人たちから聖人化されることはないだろうか」と懸念する。「同じような事件を二度と起こしてはならない。事件を終わらせず、社会全体で対策を考えていくべきだ」と力を込めた。

オウム真理教被害対策弁護団で約30年前から事務局長を務める小野毅弁護士は「松本死刑囚だけ死刑執行されると思っていたのだが……」と戸惑う。オウム真理教が関わった一連の事件は「刑事事件としては事実の解明ができているがカルト団体としての背景は明らかになっていない」と指摘する。

小野弁護士は井上死刑囚ら教団の元幹部とも接触し、教団に関する話を聞いてきた。「次第に当時のことを話すようになってきた教団元幹部もいただけに、事情を聴く機会が失われてしまったと言わざるを得ない」と複雑な心境を明かした。

教団脱会を支援していた滝本太郎弁護士は6日、松本死刑囚らの執行を受け、自身のツイッターに「立ち会えなかった、残念です」と投稿。「現役信者さんには『麻原彰晃という人はもともと存在しなかったんだよ』と伝えたい」と書き込んだ。

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