2018年7月19日(木)

文科省汚職、助成金獲得で「箔付け」 少子化が引き金

社会
2018/7/5 20:57
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 文部科学省の前局長の受託収賄事件は、私立大学を支援する同省の事業の一つが不正の舞台となった。支援事業の恣意的な対象選定と入学試験をゆがめた2つの疑惑。事業選定は監督官庁の文科省に認められたという“箔付け”となるとの声もある。少子化で大学間競争が激しくなる中、文科省の補助金に頼らざるを得ない大学の焦りも透けて見える。

東京都新宿区の東京医科大学=共同

 「補助金事業に選ばれれば大学自体が国に認められたという箔付けになり、名誉になる」。ある私立大幹部は明かす。

 事件の舞台となったのは、全学的な経営改革に取り組む大学を支援する「私立大学研究ブランディング事業」で、文科省が2016年度からスタートさせた。

 初年度である16年度は198校が申請し、40校を選定。東京医科大は選ばれなかった。17年度に申請した188校のうち、東京医科大を含め計60校が選定され、東京医科大は3500万円の助成を受けたという。

 17年度の審査は有識者らの委員会が実施。この選定に、当時文科省の官房長だった佐野太容疑者(58)の意向が働いていたのかどうか。東京医科大側が選定への便宜を依頼したのは、なぜか。東京地検特捜部が解明を進める中、大学関係者の間では「私大の助成金の競争原理が強まっている現状がある」と指摘する声もある。

 文科省の私立大学等経常費補助金(私学助成)は18年度の予算で約3150億円。私大の経常的経費に対する補助率は1980年の約30%をピークに、最近は10%程度まで低下。私学助成のうち、私立大学研究ブランディング事業のような、教育研究に関する特色ある取り組みに応じて配分される競争的資金の割合が上昇傾向にある。

 教職員数や学生数が基準になる「一般補助」とは異なり、こうした国の支援事業獲得に、私大がしのぎを削らざるを得ない背景には、少子化に伴う私立大の経営環境の厳しさがある。

 18歳人口は1992年の約205万人をピークに減少を続け、現在は約118万人。2030年には103万人、40年には88万人に減少すると試算される。4割の私大が定員割れする中、獲得実績は額にかかわらず、大学の研究力や経営改革の指標にもなり、対外的な宣伝や次の補助金獲得にもつながるといわれる。「補助金獲得が大学執行部の大きな責任になっている」(別の大学関係者)という。

 補助金の配分では、専門家による審査など中立性や公正性を確保する仕組みがある。円滑に採択されるには、情報の入手などの面で、事務方である文科省とのパイプが意味を持つと考える大学関係者は少なくない。

 今回のような競争的資金は大学改革の「呼び水」やインセンティブとなることが本来の役割。だが少子化に加え、低金利で資産運用もままならない中、大学は財政面で苦境に直面している。

 選別される側の大学が文科省の顔色をうかがう傾向が強まり、大学への資金配分に強い影響力を持つ文科官僚の腐敗が起きやすい土壌がつくられる中で、今回の事件が起きた可能性がある。捜査では不正を招いた温床の徹底解明が求められる。

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