5G時代、アイデアの勝負
(WAVE)大崎真孝氏

2018/7/9 6:30
保存
共有
印刷
その他

現在の人工知能(AI)ブームは3つのテクノロジーの交点がイノベーションを起こしたことによる、とスタンフォード大学のフェイ・フェイ・リー教授は述べている。

米エヌビディア日本代表 大崎真孝
日本テキサス・インスツルメンツで20年以上、営業や技術サポートなどに従事。2014年から米エヌビディア日本法人代表兼米国本社副社長。首都大学東京でMBA取得。

1つ目はビッグデータ。インターネットや携帯電話の普及に伴い、巨大な情報の蓄積とアクセスが容易になった。これがAIの教師データとなる。人に置き換えればあらゆる経験の数だ。これが多くなればなるほど、成熟して対応力がつく。AIの種だ。

2つ目はディープラーニング(深層学習)などのアルゴリズムの進化だ。いかに経験を処理するかの手法のこと。人の脳の神経細胞の動きのようなものと言えるかもしれない。ビッグデータを種として、どのようにそれを解釈するかの統計的な処理を指す。

最後に、それらを高速処理する計算基盤、GPU(画像処理半導体)だ。数十億のパラメーターを有する複雑なディープラーニングアルゴリズムが出現し、その計算量は億、兆、京の次の単位である垓(がい)を超え、従来型のCPU(中央演算処理装置)ではもはや現実的な時間での計算は不可能と言われている。人の頭脳のように超並列に処理するのがGPUである。

この3つのテクノロジーが必然的に出合い、まさに「カンブリア爆発」を起こしたことが現在のAIの潮流となっている。

そして2020年に向けて、さらに用途を広げるテクノロジーが追加される。それが5Gの無線技術である。様々なデバイスとビッグデータを処理するサーバーを大容量で無線接続する。このデバイスからの視点があらゆるモノがネットにつながる「IoT」であり、AIのもう一つのキーワードだ。

Trillion(1兆)センサーという言葉に代表されるような多数のIoTデバイスの出現でデバイスとサーバー間の通信トラフィックは爆発的に増大する。そのトラフィックを賄う巨大な通信網が5Gだ。

IoTデバイスとサーバー間の通信が活発になり、「推論」と「学習」のディープラーニングのループがより強靱(きょうじん)になる。そして新たなサービスアプリケーションが生まれていく。

5Gの通信ネットワークによって高精細映像の伝送はもとより、医療、自動運転や映像監視システムなど、人々の生活をより安心・安全に確保できることは想像に難くない。そこで、あえてもっと新しいアイデアの出現を期待したい。

我が国が得意とするアニメと撮影中の動画をリアルタイムで合成したらどうだろうか? 物体認識と地図の融合により高精度でかつ楽しい街歩きナビゲーションを作れないか? ドローンに5Gを常時接続してみたら? スタジアムのあらゆる角度で観客達が自由視点でスポーツ観戦を楽しめないだろうか?

無線技術の粋を集めた5Gが本領を発揮するのは、それを使ったサービスが人々の目に触れるときだろう。その意味でも多くの新たなサービスのアイデアが様々な業界から生まれるべきである。その挑戦が20年以降の我が国の競争力につながると考える。AIに必要かつ用途を広げる技術はそろいつつある、後は我々が新たな視点を持つことだ。

[日経産業新聞 2018年7月5日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]