2018年7月16日(月)

ミニシアター、街とコラボ(もっと関西)
カルチャー

コラム(地域)
関西
2018/7/6 11:30
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 ミニシアターが外部の団体や企業との連携に注力している。英語教室や書店、飲食店などと協力し、単独では限られる企画力や発信力を補う。圧倒的な集客力を持つシネコン(複合映画館)とは違った魅力を打ち出し、ミニシアターの新たなファンを開拓する。

映画を通じ英語を学ぶ講座を開く(6月、神戸市中央区の元町映画館)

映画を通じ英語を学ぶ講座を開く(6月、神戸市中央区の元町映画館)

 「『There you go!』この表現はよく使います。ここでは『ほらね!』という意味です」。6月中旬、元町映画館(神戸市中央区)の待合スペース。映画で英語を学ぶ講座で、講師の田中亜紀さんが呼びかけた。教材は同館で当時上映していた米映画「ラッキー」。老人が日常で死と向き合う姿を描き出す作品だ。講座では彼が知人の訪問を受ける場面の会話を取り上げた。

 受講者の1人、同市の藤岡純子さんは「表情や状況を見れば、英語表現の理解がより深まりそう」と感心することしきり。早速、講座後に映画を見る計画を立てていた。

元町映画館と南京町がタイアップしたメニュー(神戸市中央区)

元町映画館と南京町がタイアップしたメニュー(神戸市中央区)

 講座は同館とパルシネマしんこうえん(同市兵庫区)が、英語教室などを開く団体「Kobe Family Labo」と連携し、6月に始めた。月1回、いずれかの館で上映中の米映画を取り上げる。

 初回は13人が参加し、ほぼ全員が講座前後に作品を見た。元町映画館の広報企画担当、宮本裕也さんは「未知の映画と出合うきっかけにしてほしい」と狙いを語る。

 同館は8月18~24日、近くの中華街・南京町と連携した企画も開催する。ブルース・リー主演の「ドラゴンへの道」、日本でブームとなった「幽幻道士(キョンシーズ)」などの香港・台湾映画を上映。鑑賞後、料理店や菓子店など8店で特典を受けられる。

 中華料理店「民生 廣東料理店」と「劉家荘」では映画にちなんだ料理も提供。民生では竜に見立てたハモのスープを味わえる。劉家荘ではキョンシーの弱点である餅米のちまきを出す。同社の劉繕雲代表取締役は「食も映画も地域で共存共栄できれば」と話す。

出町座は書店と飲食店を併設(京都市上京区)

出町座は書店と飲食店を併設(京都市上京区)

 京都市の出町座は昨年12月、中京区から上京区に移転した。新館は書店と飲食店と共同で開業。書店は出版社の社員らが運営し、映画や文化関連などおすすめの書籍を並べる。飲食店は十数席を備え、通常のカフェメニューやアルコールのほか、映画にちなんだドリンクなども出す。

 出町座の田中誠一支配人は「ミニシアター単体ではシネコンに勝てない。映画を生活の中に位置づけてもらうという観点から店を集めた」と狙いを語る。相乗効果を発揮し、新たな常連客も獲得しているという。

シネ・ヌーヴォのポスター作りのために写真を撮る大学生(大阪市西区)

シネ・ヌーヴォのポスター作りのために写真を撮る大学生(大阪市西区)

 ミニシアター同士の連携も進む。元町映画館や出町座、シネ・ヌーヴォ(大阪市西区)などは今年から、若手監督の作品や関西にゆかりある映画を中心に年10本ほどを「次世代映画」と名付け、一押し作品として共同で宣伝している。シネ・ヌーヴォでは大学生に館のポスターの製作を依頼するなど、若者の獲得にも力を入れる。

 全国のミニシアターが加盟するコミュニティシネマセンター(東京)によると、全国のスクリーン数に占めるシネコンの割合は2016年で87.7%。ミニシアターを支えるのは、シネコンとは異なる雰囲気や歴史に愛着を持ち、作品の選定を支持する固定層だ。

 ミニシアター各館の連携策で、こうした固定層をどれだけ拡大できるか。多様な映画文化の発展に個性あるミニシアターの存在は欠かせない。外部との連携による智恵の出し合いが、これまで以上に求められる。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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