2019年9月17日(火)

韓国版「働き方改革」スタート 労働時間、大幅短縮
働きすぎ解消と雇用創出の二兎追う 効果は未知数

2018/7/5 17:18
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【ソウル=鈴木壮太郎】韓国版「働き方改革」が7月から始まった。改正勤労基準法で労働時間の上限が残業を含め52時間に短縮され、違反すれば事業主が処罰される。1人あたりの労働時間を減らし、「働き過ぎ」の解消とワークシェアリングによる雇用創出の一石二鳥を狙う。ただ、企業は人件費の負担増に慎重で、政権のもくろみどおりにいくかは未知数だ。

これまでは週40時間の法定労働時間プラス残業で最大週68時間まで働けたが、法改正で一気に上限が16時間減った。違反すれば事業主は2年以下の懲役か2000万ウォン(約200万円)以下の罰金を課される。まずは300人以上の事業所が対象で、2021年までに全事業所に適用される。

企業は週52時間という上限を守るため知恵を絞る。一法はパソコンの電源の管理だ。

造船大手の現代重工業は午後4時45分からパソコン画面に警告が表示され、5時30分になるとパソコンの電源が自動的に落ちる仕組みを導入。流通大手のロッテショッピングは社員がそれぞれ設定する8時間の勤務時間に合わせ、始業開始の15分前にパソコンが起動し、終業15分後には電源が切れるようにする。

半導体大手のSKハイニックスでは、法定労働時間の40時間を超えると、4時間超過ごとに本人と上司に警告メールを送る。通信大手のSKテレコムは月曜から木曜までで労働時間が40時間を超えてしまったら、金曜は休みとする制度を取り入れた。

韓国では長時間労働が常態化している。年間労働時間は2052時間と、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中ではメキシコ(2348時間)に次いで2位。日本(1724時間、4位)よりも長い。法改正で「過労社会」からの脱却をめざす。

文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって、今回の法改正の真の狙いは雇用増にある。1人当たりの労働時間がここまで大幅に減れば、効率化では吸収しきれず、同じ量の仕事をこなすには企業は採用を増やす必要があるとみられる。韓国の若年失業率が10%を超え、就職難が社会問題になっている。金栄珠(キム・ヨンジュ)雇用労働相は「1万人が新たに採用され、さらに2万人の採用が進行中だ」と語る。

だが、採用増に踏み切る動きは活発とはいえない。ロッテグループは傘下のメーカー4社で生産職200人を追加採用した。一方で、大型スーパー「ロッテマート」の営業時間を午前10時から午後11時までとし、閉店時間を1時間早めた。新聞業界はもともと日曜日が休刊だが、ソウル新聞は7月から土曜日も休刊にする。人繰りがつかないためだ。

業績への影響も懸念される。韓国経済研究院が大企業を対象に実施した調査では、55%が業績に「否定的」と回答。「肯定的」(20%)を大きく上回った。

人手不足に悩む中堅・中小企業からは「準備期間が足りない」との悲鳴が上がる。こうした声を受け、韓国政府は6カ月の猶予期間をもうけ、その間は企業を処罰しないことにした。ただ、来年以降に適用対象になる、より小さな企業の懸念はさらに強い。

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