2018年12月14日(金)

ITから競艇選手まで、高専OB「技術系だけじゃない」
高専に任せろ!2018

コラム(ビジネス)
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2018/7/6 11:30
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高等専門学校(高専)出身者によるスタートアップは多いが、ソフトウエア開発のフラー(千葉県柏市)は特に異色だ。創業者の渋谷修太最高経営責任者(CEO、29)を筆頭にトップ4人を高専OBが固める。彼らに共通するのは、実践しながら学ぶ姿勢と夢にまい進するひたむきさだ。高専で培った持ち味で新ビジネスを切り開く。

フラーは渋谷修太CEO((左)から3人目)らトップ4人が高専OBだ(千葉県柏市)

フラーは渋谷修太CEO((左)から3人目)らトップ4人が高専OBだ(千葉県柏市)

つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅。フラーの本社は駅前ビルの一角にある。オフィスの入り口では、同社が開発したスマートフォン(スマホ)の節電アプリ「ぼく、スマホ」のキャラクターのぬいぐるみが出迎える。社員のデスクには楽器や菓子が並ぶなどリラックスした雰囲気だ。

フラーの主力事業は、アプリの開発者向けの市場分析サービス「AppApe」。同分野で国内首位を握る。アウトドアブランド「スノーピーク」の公式アプリの開発運営も担当している。

「もともとゲームの作り手になろうと思って高専への進学を決めた」。渋谷氏はこう振り返る。

ゲームは少年時代から友達とつながるための大事なツールだった。行動範囲が限られる子どもにとっては、壮大なRPG(ロールプレイングゲーム)の世界はダントツに楽しかった。ゲームのプログラマーを志して中学時代からプログラミングの専門書を読み、そのまま高専に進んだ。

長岡工業高等専門学校(新潟県長岡市)ではプログラムの勉強に打ち込んだ。またニューラルネットワーク(神経回路網)を研究し、脳がどのようなプロセスで意思決定するかなどを分析、株価も予測したという。

転機はいくつかあった。長岡高専の約1000人の生徒のうち、約300人が入る寮でまとめ役を務めたこともそのひとつ。役目をこなすうち、「多くの人とコミュニケーションを取ったり、組織をマネジメントしたりするのが向いていると気付いた」。

そして進路についてあれこれ考えていたころ、通い詰めていた書店で1冊の本に出合った。米ハーバード大ビジネススクール(経営大学院)を首席で卒業し、ライフネット生命保険を共同で立ち上げた岩瀬大輔氏の著書だ。本の中に、ハーバードの教えとして「一度しかないワイルドでかけがえのない人生。あなたはどう過ごすつもりですか」という記述があった。「自分は高専の仲間たち一人ひとりの夢を叶える場をつくりたい」。そんな思いが起業の道に的を絞らせた。

折しも、高専在学中の2004年には中越地震、07年には中越沖地震と2度の地震を経験する。「限られた人生に無駄な時間はない」。焦燥感も渋谷氏の背中を押した。

■「即実践」で新事業開拓

起業するならビジネスについて知らなければならない。高専生の4割は大学に編入するが、その際は理工学系の学部に進む。渋谷氏は筑波大の理工学群に編入したが、そこで経営工学を専攻し、マーケティングや経営の理論を習得した。

卒業後は在学中からインターンとして働いていたグリーに「3年以内に辞めて起業する」と宣言して入社する。「自分たちで作ったスマホ向けアプリの広告収入が想定外に多かったので自信が付いた」と11年9月に退社。2カ月後には茨城県つくば市内のアパートで創業した。

頼りになったのは高専コミュニティーだ。ビジネスパートナーは長岡高専時代の親友だった桜井裕基氏(29)。桜井氏は最高執行責任者(COO)で、サービスデザインなどを手掛ける最高文化責任者(CCO)も兼任する。渋谷氏が電話をかけて「夢をかなえよう」と誘い、呼び込んだ。

4人のうち残る2人は、筑波大時代に出会った苫小牧工業高等専門学校(北海道苫小牧市)OB。大学時代、3年から編入する高専OBはマイノリティーだったという。「単位をどうやって取るかなど高専卒の学生同士で年齢を超えたつながりがあった」(渋谷氏)

フラーは12年に節電アプリ「ぼく、スマホ」を公開。13年には現在の事業の柱である「AppApe」を投入した。

渋谷氏は「辞めようと思ったことは全くないが、会社がつぶれそうだと思ったことは何度もある」と苦笑する。ただ、行き詰まったときは「理屈をこねるよりも、行動する」と言う高専生の行動原理で壁を越えてきた。

AppApeは分析機能に磨きをかけ、いまや4000社超が使用する国内随一のサービスに育った。フラーは国内外のベンチャーキャピタル(VC)から累計7億円以上を調達している。社員数も50人まで膨らんだが、10人程度が長岡高専卒の後輩という。

渋谷氏は「スタートアップが成功するためには、会社がやりたいことと、働く人がやりたいことが、同じ方を向いている必要がある」と考えている。「その点、高専卒は趣味や個性がハッキリしている。やりたいことが明確で、スタートアップにはマッチしている」。

フラーのウェブサイトでは役員が自分の夢をアピールしている。渋谷氏の夢は「世界一ヒトを惹きつける会社を創ること」。同じ志を持つ仲間を巻き込みながら、一歩一歩前進している。

(企業報道部 牛山知也)

■競艇挑戦 勝負の世界へ

モーターボートレースで一風変わった選手がこの春、誕生した。粟田祥選手(23)。阿南工業高等専門学校(徳島県阿南市)を卒業し、競艇の世界に飛び込んだ。建築を修めた粟田さんがなぜ、陸を離れて海の世界を選んだのか。高専で学んだ腕前は新たな世界でいかされるのか。準学士(高専卒の称号)ボートレーサーの勝算やいかに。

競艇場は1周600メートル。6艇で競い、時計と反対回り(左回り)に3周して順位を決める。ボートは時速約80キロメートル、体感速度約120キロメートルで、約1分50秒で勝負は決する。ターンの横G(求心加速度)のかかり方はアミューズメントパークの比ではない。水面は平らに見えるが、ほんの小さな波や海流でハンドルを取られる。砂利道を猛スピードで走行するようなものだ。全国に選手は1600人。頂点の選手になると年間3億円を稼ぐことも夢ではない。

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