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ミケルソン、晩節汚すような行為の代償は…

ゴルフジャーナリスト ジム・マッケイブ

フィル・ミケルソン(48、米国)のキャリアを振り返れば、様々な栄光に彩られている。今年3月、男子ゴルフの世界選手権シリーズ、メキシコ選手権で2013年全英オープン選手権以来5年ぶりのツアー優勝を果たすと、ファンはその復活に歓喜した。

しかしながら意外にも彼は、世界ランキングで1位になったことがない。

彼はこれまで、米PGAツアーで40勝以上を挙げた。マスターズ選手権の勝者に贈られるグリーンジャケットを3着も手にし、全英オープン選手権の勝者に贈られるクラレット・ジャグと全米プロ選手権勝者に贈られるワナメーカー・トロフィーも獲得している。ただ、どうしても世界ランク1位には縁がないのだ。ミケルソンの実績には遠く及ばないリー・ウェストウッド、ルーク・ドナルド(ともに英国)、マルティン・カイマー(ドイツ)らが頂点の景色を知っているのに、である。

背景には、全盛期をタイガー・ウッズ(米国)と過ごしたという不運があるが、3日現在の順位は20位。彼は世界ランクで首位に立つことなく、キャリアを終えるのかもしれない。

ショートゲームで革命もたらす

もちろん、だからといって、彼の選手としての評価が下がるわけではない。彼はショートゲームで革命をもたらした。その後、多くの若手選手がその技術に学んだ。トラブルからのリカバリーはファンを熱狂させ、彼はどんなピンチでも自信を失わなかった。

また、選手が有名になると、自分の発言や行動が与える影響の大きさにおびえ、注目を避けようとする傾向があるが、彼は自分の立場を自覚し、その上で必要とあれば声を上げた。

14年の欧州と米国の対抗戦、ライダーカップで敗戦後に米代表の主将だったトム・ワトソンの采配を批判したのは有名な話。さらに、敗因を分析する委員会を立ち上げるよう動いている。負けたのはワトソンだけの責任ではなかったが、1995年以降、米代表は2勝8敗と大きく負け越していた。その敗因については選手それぞれが意見を持っていたものの、表立っては言い出しにくい雰囲気があった。そんな中でもミケルソンは臆することはなかった。

ただ、そうしたこれまでの言動とはどうしても結びつかないのが、先日の全米オープン選手権(6月14~17日、シネコックヒルズGC)での振る舞いである。多くが目を疑ったのではないか。

第3日ラウンド終了後、取材に対応するミケルソン(中央)=USA TODAY

問題の場面は16日の第3日ラウンド、13番のグリーン上で起きた。彼は下りの15フィート(約4.6メートル)のボギーパットをミス。カップをオーバーしたボールは加速しながら、下っていった。するとその瞬間、ミケルソンは小走りでボールに向かい、まだ動いているそのボールを打ち返してしまったのである。

前代未聞の事態といっていい。

もちろん、ルール違反である。罰則は2打。ミケルソンが知らないはずがない。ミケルソンもホールアウト後、囲まれたメディアに「知っていた」と明かした上で、その意図をこう説明した。

「また、行ったり来たりしたくなかった。ペナルティーを受け入れればいい。実際に何度かやることを考えた。その機会がきたまでだ」

明らかな故意、失格訴える識者も

あのボールがどこまで転がったかはわからない。しかし、ミケルソンの論理は2罰打を受け入れたほうが、結局はダメージが小さくなるというもの。彼にしてみれば、うまくルールを利用したということになるが、多くはそうとはとらなかった。ルールの悪用と捉えたのである。明らかな故意であることから、失格を訴える識者も少なくなかった。

その4日後、彼は謝罪を表明したものの、ファンらが納得したかといえば疑わしい。

今回の全米オープンは確かに、グリーンでボールが止まらない、速すぎるという批判があった。それを象徴するような出来事でもあったが、それでもプロの行為ではない。さらにミケルソンには、みんなを代表してグリーンの問題を訴えたと捉えているフシもある。だとしたら、完全に誤解だ。誰もあんな形での抗議を望んでいない。

問題はさらに根深い。彼はどこで考え方を誤ったのか、それに気づいていないようなのだ。

晩節を汚すような行為の代償も、彼が考えているより小さくない。

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