2018年7月21日(土)

20年ぶり全面刷新ジムニーの「原点」、激戦SUV市場に挑む

コラム(ビジネス)
自動車・機械
2018/7/5 11:55
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 スズキは5日、20年ぶりに全面改良した軽SUV(多目的スポーツ車)「ジムニー」を国内で発売したと発表した。キーワードは原点回帰。安全性能を大幅に向上させつつ、舗装されていない山道などオフロードでの四輪駆動による走行性能にこだわった。デザインは2世代前に戻した印象として個性を際立たせた。

 都内で同日開かれた発表会で、スズキの鈴木俊宏社長は「48年前にジムニーが生まれた原点、本格四駆に仕上がった」と強調した。軽である排気量660ccのほか、海外販売を想定した同1500ccの小型SUV「ジムニーシエラ」もラインアップする。

 狭く険しい悪路を走ることに適する「ラダーフレーム」と呼ばれるプラットホーム(車台)の仕様を継承した。足回りの頑丈さが特徴だ。オフロードでの1キロメートルはオンロードでの8キロの負担に相当するともいわれる。「林業など山道などを走るプロユーザーに満足してもらえれば、一般のユーザーにも評価してもらえる」との狙いがある。

 このフレームでねじれに対する強さを従来の1.5倍に高めた。ラダーといわれるのは形がハシゴに似ているためで、ちょうどハシゴを立てかけて、足をかける部分にあたる横向きの支えを増やした。一方で、軽くて強いハイテン(高張力鋼板)や超ハイテンなどの高機能鋼板をフレームの65%で使って重さを抑えた。

 20年ぶりの全面改良には各地域での法規制で衝突安全性能への要求が高まっていることが背景にある。例えば、国内では、2月からは衝突時の「歩行者脚部保護に係る基準」が軽自動車の既存車種にまで適用された。曲がるときの走行を安定させる自動制御の横滑り装置も同様だ。今後も世界各国で安全への要求は高まる見通し。一部改良で法規をクリアするよりも設計を大幅に見直す全面改良が適切だと判断した。今後も「ジムニー」ブランドを守り続けるスズキの覚悟ともいえる。

 1970年発売の初代ジムニーからの累計販売台数は約285万台と多くを販売してきたが、年平均では約6万台にとどまる。さらにスズキの展開する他の車種はモノコック構造。ジムニーはジムニーだけの車台を使っており、コスト効率が良いとはいえない。

 約50年間の世界販売を振り返れば、従来モデルの末期である2017年度でも4万9000台を販売するなど安定した支持層はいる。車台の共通化が進む自動車業界において投資効果をどう回収できるのか。鈴木社長は「看板モデルの1つとして、さらに成長させていきたい」と力をこめる。

 本格四駆の代表格、トヨタ自動車「ランドクルーザー」や独メルセデス・ベンツ「Gクラス」と比べて小さく、価格も安い。Gクラスと比べると、車の長さは1メートル以上短く、幅は約38センチ小さい。狭い山道や道の狭い都市部でも運転しやすい。価格は約10分の1の145万8千円からだ。

 「名車には時を超えた魅力がある。名車自体がスタイルを決める」。1月に新型Gクラスを世界初披露したダイムラーのディーター・ツェッチェ社長は強調した。名車のひとつといえるマツダロードスターのかつての開発幹部も「安全や環境性能を高めるのはメーカーとして当たり前。存在意義が大切だ」という。

 同日の発表会に鈴木修会長は「熱狂的ファンの皆さまが深く愛してくださったことで、ここまで来ることができた」とコメントをよせた。かつては三菱自動車「パジェロミニ」が直接のライバルだったが、いまや「世界に誇る唯一無二のコンパクト四駆車だ」(鈴木社長)。激戦のSUVで存在感を際立たせる。(湯沢維久)

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