自社が筆頭株主335社 消却やM&A、活用少なく
株主解剖(5)

2018/7/5 19:30
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上場企業が保有する自社株が市場の関心を集めている。日本経済新聞社の調べでは2017年度末に自社が筆頭株主になっている企業は335社と全体の1割近い。積極的な自社株買いが続くとともに「金庫株」として持ち続ける企業が多い。消却やM&A(合併・買収)への活用が課題になっている。

東京証券取引所によると全国の上場企業では2017年度末時点で自社が保有する株式の比率は3.75%と、1999年に集計を始めて以来最高となった。自社が筆頭株主の企業は前年より減ったが、全体の自社株の保有額は株高の影響もあって1年前に比べ18%増えている。

アイ・エヌ情報センターの集計では2017年度の自社株買いの金額は4兆4008億円。トヨタ自動車が約5000億円分を取得するなど、過去4番目に多い水準だ。

企業は株主還元策の一環として自社株買いに取り組むのに加え、大株主の売り出し分を株価への影響を抑えるために買い取ることも多い。

自社株の保有比率が高いジョイフル本田は昨年6月、筆頭株主である香港の投資ファンドからTOB(株式公開買い付け)で自社株を取得した。ティーガイアは16年に三菱商事の売り出しに応じたため、自社の保有比率が3割近い。「消却するか資本政策に使うかは検討中」(同社)といい注目されている。

株価の安い時に自社株を買い入れ、高くなれば売り出すことは上場企業として正当な資金調達の手段だ。昭和電工は3月に自社株600万株を海外で売り出した。借入金の返済にあて「財務体質の改善に自社株を有効活用した」(同社)。ただ発表翌日の株価は6%安と急落。投資家は金庫株が再び市場に放出され一株あたり利益が希薄化することを好まない。

NTTドコモKDDIなどは、発行済み株式に占める金庫株の比率が5%を超えた分を消却するルールを定めるが、こうした企業はまだ少数だ。ゴールドマン・サックス証券の鈴木広美ストラテジストは、「現預金などの手元資金と同様、有効な使い道がないのであれば消却して株主に還元すべきだ」と指摘している。

一方で自社株はM&Aや合従連衡の一つの手段だ。トヨタは昨秋のマツダとの提携にあたり、自社株約829万株をマツダに割り当てた。熊谷組住友林業と手を組み自社株31万株を新株発行とあわせて割り当てた。

小規模な出資案件では金庫株が用いられているが、欧米企業がM&Aで自社株を積極的に活用するのと比べると機動性に欠ける。経済産業省によると、1998~16年に買収目的のTOBで対価に自社株を活用した割合は米国で5割を超え英国は8割を占めたが、国内はゼロだった。

M&Aの手法を広げ企業の事業再編を促そうと、政府は今年度の税制改正で関連法の改正を決めた。これまで買収の対価として株式を受け取る側は株式譲渡による利益として課税対象となったが、改正により課税の繰り延べが認められる。今後は買収などに自社株を使う場面が増えそうだ。

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