2018年9月23日(日)

内向き欧州、ドイツまで 移民制限で政権分裂回避

トランプ政権
ヨーロッパ
2018/7/3 18:27
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 【ブリュッセル=森本学、ベルリン=石川潤】難民・移民政策を巡って閣内対立が続いていたメルケル政権の瓦解という最悪のケースはひとまず回避した。しかし、今回のドイツの政治危機では、欧州統合の中核国にまで自国最優先を掲げる「内向き」の姿勢が波及してきたことが改めて浮き彫りになった。欧州統合の先行きにも影を落としつつある。

 「難民らを国境で追い返す」。ポピュリズム(大衆迎合主義)政党さながらの主張を繰り返していたドイツのゼーホーファー内相とメルケル首相が2日夜、難民らの流入抑制策で合意した。メルケル氏は政権崩壊を避けるため、オーストリア国境に難民らの収容施設を設置するという妥協に応じざるを得なかった。

 ゼーホーファー内相を駆り立てたのは10月の州議会選挙で極右政党に保守票を奪われかねないという焦燥感だ。ポピュリズムは既存政党に政策の変更を迫るという新たなルートで、ドイツでも確実に影響を広げている。

 オーストリアは3日、ドイツが国境管理を強化するなら自分たちもイタリアなどと接する「南部の国境を守る措置を取る」とする声明を公表した。メルケル氏が恐れた「国境封鎖ドミノ」も現実味を帯びつつある。

 「欧州の盟主」だったドイツが、閣内対立の火消しのために難民・移民政策で内向き志向の足かせをはめられ、ユーロ圏3番目の経済大国のイタリアでは極右・ポピュリズムの連立与党が政権を握る――。EUを覆っているのは、欧州統合の創設メンバーの中核国にまで、自国最優先の波が広がってきたという厳しい現実だ。

移民・難民政策で難しい調整を続けるメルケル独首相(左)とユンケル欧州委員長=ロイター

移民・難民政策で難しい調整を続けるメルケル独首相(左)とユンケル欧州委員長=ロイター

 「守る欧州」――。7月から半年間のEU議長国に就任したオーストリアが掲げたモットーにも、そんなEUの内向き姿勢がにじむ。オーストリアのクルツ首相は極右と連立政権を組む。つまり、7月からEU共通の政策決定の主導権を欧州で勢いづく極右やポピュリズムが実際に握り始めたことを意味している。

 象徴的なのが難民・移民政策を巡る主舞台となる内相理事会だ。議長の重責を担うオーストリアのキックル内相は「反移民」を掲げる極右・自由党の所属。ドイツにやってきた難民らの強制送還をメルケル首相に突き付け、独政治危機に火をつけたゼーホーファー独内相や、イタリアのサルビーニ内相も理事会メンバーに名前を連ねる。

 サルビーニ氏は「反移民」を掲げる極右「同盟」の代表で、内相に就任すると早速、難民らを乗せた救助船のイタリアへの寄港を拒み、強硬ぶりを発揮した。自身も強硬な移民政策を掲げるオーストリアのクルツ首相はそんなドイツ、イタリアと、欧州を不法移民から守るための「枢軸」を結成すると訴える。EUの難民・移民政策は域外との「壁」の強化へ軸足をさらに移しそうだ。

 メルケル首相の求心力低下で、独仏主導による推進力が期待されてきたユーロ改革にもブレーキがかかる懸念が強まっている。独仏が共同提案した域内の経済格差の是正につながるユーロ圏共通予算は、6月のEU首脳会議でも結局、議論は深まらず、具体像はなお宙に浮いたままだ。

 対ロシア政策でも、脅威に直面するポーランドなど東欧やバルト3国がEU一体での強硬姿勢の堅持を求めるのに対し、イタリアのコンテ首相は対ロ経済制裁の早期解除を主張。日米欧の主要国(G7)の枠組みへのロシアの復帰を唱えるトランプ米大統領にも同調を示すなど、EU各国の足並みが乱れている。

 「EUは中国と同じぐらい悪い」。通商問題でEUを敵視するトランプ米大統領への欧州の対抗力にも不安がのぞく。EUの首脳らは結束に不安を抱えたまま、11~12日にブリュッセルで開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、トランプ氏と対峙する。「団結すれば立ち向かえる。バラバラになれば倒れる」(トゥスクEU大統領)。独の政治危機はひとまず乗り切ったが、EU全体としての政治危機はまだ続きそうだ。

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