新興ロケット世界と競争 キヤノン・IHI系、21年度商用化

2018/7/2 19:48
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キヤノン電子やIHIエアロスペース(東京・江東)などは2日、共同出資するロケットの企画会社が増資し、事業化段階に入ると発表した。2021年度の衛星打ち上げサービス開始を目指す。ロケット打ち上げは世界でコスト低減が進む。特に大幅な需要拡大が見込まれる小型ロケットでは米中などで新興企業が登場。日本でもインターステラテクノロジズ(北海道大樹町)が6月30日の実験に失敗したが開発を続ける方針で、国内外で競争が激化しそうだ。

スペースワンはミニロケット「SS-520」の知見を生かす(2月の打ち上げ)

ロケットの開発や打ち上げはこれまで政府系機関が担ってきた。ノウハウがある程度確立できたため、先進国では事業主体を民間に移す動きが相次ぐ。1回の打ち上げに数十億から百億円以上がかかる従来型の大型ロケットは三菱重工業などの大手が取り組む一方、数億円程度で済む小型ロケットにはスタートアップも参入している。

キヤノン電子とIHIエアロ、清水建設、日本政策投資銀行は17年8月にロケットの企画会社を設立した。今回、4社に対する第三者割当増資で資本金を1億円から14億円に増やした。増資後の出資比率はキヤノン電子が50%、その他は非公表だ。会社名はスペースワンに変更した。

増資資金で独自ロケットを開発する。目指すのは全長十数メートルと、日本の基幹ロケットの5分の1程度の大きさだ。米国では500万ドル(約5億5千万円)での打ち上げを目指す企業も出た。スペースワンの太田信一郎社長は「競合に負けない価格にしたい」と話す。

一定の技術蓄積はある。キヤノン電子とIHIエアロは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小型ロケット開発に参画。18年2月に打ち上げた「SS-520」でも航行技術やエンジン開発などを供給した。

小型ロケットに注目するのは、小型衛星の打ち上げ需要が高まっているからだ。農場や漁場を撮影して生産者にデータを提供、生産効率向上につなげるといった新事業が誕生。コンテナの荷動きを観察すれば経済状況も把握できる。これまでは防衛や宇宙科学に使う大型衛星が中心だった。

米調査会社のスペースワークスによると、小型衛星の打ち上げ需要は23年には460基分と16年の4.6倍に増える。

既存の大型ロケットは1回に100基以上をまとめて打ち上げることもあり、顧客は注文が集まるまで1年以上待つことも多い。小型では衛星1基でも採算がとれる。スペースワンは20年代半ばに年間20機を飛ばし、契約から1年以内に打ち上げられるようにする。

先行するのは海外勢だ。米ロケットラボは1月、小型衛星を載せたロケットの打ち上げに成功した。06年に創業し、企業価値が10億ドル(約1106億円)を超える「ユニコーン」企業だ。

中国の重慶零壱空間航天科技(零壱空間)は5月に実験機の打ち上げに成功した。15年に創業した零壱空間は、中国国内の有力VCや重慶市政府と連携するなど潤沢な資金を調達している。

日本勢ではインターステラテクノロジズが地上100キロメートルの宇宙空間を目指す観測ロケット「MOMO(モモ)」を開発している。17年7月に初号機が地上20キロの高さまで飛行し「部分的に成功」(稲川貴大社長)。18年6月30日の2号機の打ち上げには失敗した。

メインエンジンにトラブルがあったとみられる。ロケットは飛び上がる姿勢を保ったまま地上に激突した。発射台には被害がないという。次号機以降も活用ができそうだ。離散した2号機の機体や部品を回収して原因を探っている。安定した打ち上げは簡単ではない。

海外勢でも失敗は珍しくない。ロケット市場の価格破壊をけん引する米スペースXは初めてのロケットは不具合が続いた。ロケットラボも4月の打ち上げはトラブルで延期している。開発資金の調達や技術面での試行錯誤を繰り返しながら、いかに早くノウハウを確立できるかが鍵になる。

世界では大型ロケットの低価格化競争も激化している。米スペースXは、一度打ち上げに使ったロケットを回収し、再利用する技術を開発。欧州アリアンスペースや、JAXAとの共同開発も続ける三菱重工はコスト半減を目指す。

大型小型問わず世界で激化するロケット競争。信頼性に加え、顧客となる衛星事業者が使いやすいサービスを作り上げられるかが問われる。(矢野摂士、薬文江)

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