有価証券報告書、トップ自ら発信 金融庁が指針

2018/7/2 20:57
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金融庁は上場企業に対し有価証券報告書(有報)に載せる情報の拡充を求める。経営者に競合相手と比べた優位性や、経営上のリスクを独自の分析を交えて発信するよう促す。取締役の報酬の決め方や持ち合い株の保有方針もより詳細に開示させる。数字の羅列の形式にとどまる有報を、実質的な投資判断の材料とすることを目指す。

金融庁は2017年末から情報開示に関する作業部会で議論を進め、2日までに報告書をまとめた。今秋から具体的に盛り込むべき内容の指針づくりを始める。有識者を交えて策定し、19年度にも適用する。

有報は速報性を重視する決算短信よりも後に公表される。その分開示の内容は多岐にわたり、「企業情報の宝庫」ともされてきた。だが実態は紋切り型の表現も目立ち、投資家が有効活用できるとは言えない状況にあった。

今回の指針づくりの柱になるのは定性的な情報と、定量的な情報の両面の充実だ。有報では業績が落ち込んだ理由を「円高のため」といった通り一遍の説明で済ませるケースが多く、かねて「形式的で付加価値がほぼない」(金融庁幹部)といわれてきた。

今後は「記述情報」と呼ばれる定性的な情報を充実させる。最大のポイントは経営者自らが事業の現況を説明することだ。ビジネスの優位性や、経営上の課題について自ら分析してもらう。

その内容の濃淡は、経営者の資質を知る貴重な手がかりになる。有報が経営戦略やリスクを十分に示していない場合は投資対象から外すなど、投資家の銘柄の選別につながる可能性がある。

欧米に目を転じると、事業分野別に市場動向や自社の経営成績を詳しく公表している企業は少なくない。好事例とされる英ロールス・ロイス社は自社にとって不都合な情報も掲載している。

あわせて定量的な情報の拡充も求める。ひとつが役員報酬だ。現在は1億円以上の報酬を得ている役員の氏名と金額の開示が義務づけられている。これに報酬の固定部分と業績連動部分の内訳や、業績連動部分はどの経営指標にひもづいているかの情報提供も促す。

米英では取締役の報酬の決め方や報酬内容の一覧が開示されている。日本でも資生堂は社長兼最高経営責任者(CEO)から執行役員まで、それぞれ基本報酬と業績連動報酬の構成比を有報で公表している。金融庁はこうした模範的な事例を積極的に発信し、全体の底上げにつなげる。

「持ち合い株」など政策保有株の開示対象も拡大する。現在は保有額上位30銘柄が対象になっているが、関連する内閣府令を改正し、対象銘柄数を増やす。増減とその理由の開示も求める。

企業が投資家に有益な情報を出すのは、株式市場の活性化に欠かせない。これまでもコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)や、機関投資家の行動指針である「スチュワードシップ・コード」を策定。今回の有報の充実は、株主と経営者の対話を支えるパイプを太くする基本インフラという位置づけだ。

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