もう一つの五稜郭に熱視線 長野、ドローンで全景俯瞰
幕末の戊辰戦争で名高い北海道函館市の名所とは異なる「もう一つの五稜郭」として長野県佐久市の「龍岡城五稜郭」が注目を集めている。函館のような展望タワーがなく、直接俯瞰できなかった状況を一変させたのは小型無人機ドローン。築造から約150年の時を経て、星形城郭の全景が身近な技術で見えるようになった。

龍岡城五稜郭は周辺を治めていた田野口藩の藩主・松平乗謨(のりかた)が1867年(慶応3年)に築造。西洋技術を用いた星形城郭の「五稜郭」と称されるのは函館と共通する一方、面積は4分の1程度にとどまり、戦乱の舞台ともならなかったため知名度もいまひとつ劣る。
観光の上で決定的に異なるのは、函館の「五稜郭タワー」のような展望施設がない点。城郭を見渡すなら近くの山中の展望台に登るしかないが、角度が真上からではなく、最も特徴のある星形の形状が一部はっきりしない。地元住民によると、かつて国政選挙で「タワー建設」とぶち上げた候補もいたが、落選して実現には至らなかった。
長年、函館の陰に隠れた龍岡城五稜郭をクローズアップさせたのはドローンの登場だ。近年、インターネット上にはドローンによる空撮とみられる画像が確認され佐久市教育委員会の担当部署には撮影に関する問い合わせが来るようになった。
函館の五稜郭ではドローンの飛行が原則禁止され、観光客らによる空撮は困難だが、龍岡城では佐久市公園緑地課と時期や時間、安全対策を協議した上で必要な書類を提出すれば、付近の公園上空から撮影可能という。
正規の手続きを経て昨年12月にドローンを使って城郭を撮影した佐久市のカメラマン半田勇二さん(50)は「実物と設計図には相違があり、なぜなのか興味をそそられた」と感想を語る。
市教委によると、龍岡城は周囲の山から砲弾が届く距離にあり、城郭が実戦であまり役立たなかったとの見方も。担当者は「西洋の技術に憧れていた乗謨が自分の造りたい城郭を築いたのでは」と解説しており、築造経緯も関心を集めそうだ。
〔共同〕