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道後温泉、7年かけ本館改修へ 影響緩和に町ぐるみ汗

(列島追跡)

年間約100万人の入浴客が訪れる全国有数の観光地、道後温泉(松山市)が試練の7年を迎えようとしている。市は6月、街のシンボルである公衆浴場「道後温泉本館」の耐震改修工事を2019年1月15日から始めると発表した。味わいある外観を覆い、入浴定員を半減しての部分営業が7年もの間続く。集客への影響を最小限に抑えようと、地元官民は知恵を絞る。

近くの冠山から臨む道後温泉本館。最も古い部分は完成から120年以上(松山市)

夏目漱石の小説「坊っちゃん」にも登場する本館は古い部分は1894年(明治27年)に完成し、19年で125年を迎える。昭和にかけて増築を重ねた木造の建物はレトロな雰囲気を保つ。入浴だけなら料金は大人410円。1994年に公衆浴場では初めて国の重要文化財に指定された。

しかし、建物は老朽。市の2000年度の総合診断で「今後長く維持・活用していくためには、大規模地震に耐えうる本格的な保存修復工事が早期に必要」と指摘された。その後、市が設けた有識者組織の議論なども踏まえ、改修の実施は決まったが、手法や開始時期の判断は先延ばしが続いた。市は13年に17年秋のえひめ国体後に着工する方針を示していた。

市の人口約50万人の2倍近い集客力を年間で誇る本館の長期休業は観光面で大打撃だ。宿泊業者や商店経営者らの強い懸念が着工をためらわせた。いよぎん地域経済研究センター(松山市)は部分営業しながら改修した場合(工期8年で試算)の経済損失を約348億円とはじき出した。

市は本館改修をにらんだ集客てこ入れ策として17年9月、本館近くに飛鳥時代をイメージした外観の新たな外湯「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」を開業。同12月には地元住民の利用が主体だった外湯の「椿(つばき)の湯」も改装開業し、入浴客の受け皿を増やして工事に踏み切る道筋を整えた。

道後温泉旅館協同組合の新山富左衛門理事長は「3つの外湯のほか、各旅館やホテルの内湯も巡ってもらえるよう促すなど、地域ぐるみで温泉郷としての多様な楽しみ方を提案したい」と力を込める。

市は「見せる工事」で改修中の本館自体の観光資源化ももくろむ。道路を挟んで南側の小高い「冠山」には、本館を見渡す遊歩道がある。市はここに年内にも足湯や休憩所を設け、工事の進み具合を眺められるようにする。改修現場の見学ツアーも予定する。

周辺で新たな魅力づくりも進む。一遍上人誕生の地とされる宝厳寺へと続く上人坂沿いに5月、句会場の「伊月庵(いげつあん)」が完成した。辛口句評で知られる地元在住の俳人、夏井いつきさんが開いた。松山は正岡子規の出身地で俳句が盛ん。夏井さんは「俳句ファンの憧れになれば」と意気込む。

道後温泉誇れるまちづくり推進協議会の宮崎光彦会長は「道後周辺の寺社などと温泉を組み合わせて、街歩きの魅力をさらに高めたい」と話す。地域ぐるみで苦境を好機とする取り組みが試される。(松山支局 棗田将吾)

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