2018年7月21日(土)

中古iPhone、争奪戦に 乱戦格安スマホ

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2018/7/1 6:30
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 格安スマートフォン(スマホ)各社が米アップルのスマホ「iPhone」の中古品入手に躍起になっている。iPhoneは日本のスマホ市場の約5割を占めており、顧客の獲得には必須だ。大手キャリアが新品を独占的に販売するなか、格安勢がこぞって頼るのが中古品。iPhoneの有無が競争力に直結するだけに、奪い合いの様相も呈してきた。

 「一体どんなルートで手に入れたのか調べろ!」。今年1月、格安スマホ各社の端末担当者に矢のような指示が飛んだ。発端は「マイネオ」を手がける関西電力系のケイ・オプティコムが「iPhone7」「iPhone7 Plus」の新品を売り出すと発表したことだった。

 新品のiPhoneを扱えるのは、年間1000万台規模でアップルと契約できる大手キャリアに限られる。その中でマイネオが突如として新品を売り出したことは他社にとって驚きだった。

 結局マイネオが手に入れた新品は、中古品を探して流通業者を回っていた時に偶然見つけた在庫だった。競合各社は入手経路を知って安堵したものの、iPhoneはそれだけ喉から手が出るほど欲しい商品というわけだ。

■アップル製、国内の約5割

 マイネオは新品に続き、5月に中古iPhoneの販売に参入した。正規中古品と呼ばれるもので、アップルが認定した工場で電池などを取り換えている。状態は新品と比べて遜色なく、海外では新興国を中心に人気が高い。

 ただ正規中古品は台数が少ないため、安定して調達しにくいというデメリットがある。マイネオも約500台しか確保できず「在庫が入手でき次第、追加販売したい」という状況だ。

 NTTコミュニケーションズも格安スマホ「OCNモバイルONE」でiPhoneの正規中古品を扱っていたが、調達量が安定しないため「ゲオ」など国内の買い取り業者からの仕入れを17年11月に始めた。

 新品に比べた割安感が好評といい、年内に月間の販売台数を現在の3倍の5000台に伸ばす。かつて同じNTTグループのNTTドコモに新品iPhoneの共同調達を頼んで断られた過去もあり、中古で攻勢をかける。

 各社がiPhoneの仕入れに一喜一憂する背景には、やはり日本市場におけるアップルの圧倒的な強さがある。調査会社のMM総研(東京・港)によると、2017年度の国内のスマホの出荷台数のうち49.9%がiPhoneだった。18年1~3月期の世界市場でiPhoneのシェアである15.6%(独スタティスタ調べ)に比べ飛び抜けて高い。

 iPhoneは08年にソフトバンクが独占的に販売したことで注目され、日本のスマホ市場を切り開いた存在だ。日本ではこれまでiPhoneしか買ったことがない消費者も多く、「スマホ=iPhone」の構図ができている。「iTunes」や「iCloud」を使ったデータ移行など、スムーズに乗り換えられることもiPhoneを使い続けるサイクルに拍車をかける。

 イオンリテールが運営する「イオンモバイル」はレンタル大手のゲオ(名古屋市)と組み、中古iPhoneを陳列した店舗の出店を始めた。現在は7店舗まで広がっており、iPhoneにこだわる一方で、通信代は節約したいという消費者に支持されている。イオンモバイルの中心顧客は40~60代だが、「iPhoneなら周りに使っている人がいる。スマホ初心者でも使い方を教えてもらえる」という理由で選ぶ顧客も多い。

■大手系列は新品販売

ワイモバイルは学割キャンペーンをしかける(写真はワイモバイル六本木InternetPark店)

ワイモバイルは学割キャンペーンをしかける(写真はワイモバイル六本木InternetPark店)

 同じ格安スマホでも、大手系列のブランドでは全く状況が異なる。ワイモバイルやUQモバイルなどはキャリアと共同で端末を調達できるため、新品のiPhoneを販売できる。販売規模が小さく、アップルと直接取引できない独立系の格安事業者にとって「越えられない壁」だ。ある格安スマホ会社の調達担当者は「素直にうらやましい」と話す。

 楽天の格安スマホ「楽天モバイル」も正規中古品を販売している。ただ実際に仲介業者から届くのは「発注した分より少ないことの方が多い」という。19年秋には自前設備で通信会社になると表明している。参入時にiPhoneを売れるのかは「まだ分からない」という。

 KDDIが50%を出資するジュピターテレコム(JCOM)も格安スマホを手がけているが、新品のiPhoneを売っていない。「(キャリアとの共同調達による)新品は扱う意味がない。格安スマホの顧客はただでさえ安いものを求めている」(井村公彦社長)とのスタンスだ。

 海外では当たり前の中古スマホ市場が国内で育たない背景には、キャリアの戦略がある。

 NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの大手3社は顧客が新品を買う際に利用中のスマホを下取りし、その多くを海外の業者に転売している。国内のスマホ販売のうち、中古が占めるのは1割にも満たない。

 消費者側も自分が使った端末を自分で中古市場に売るのではなく、キャリアが提示する買い取りプランに乗る事例が大半だ。こうして供給が絞られているうえ、消費者の新品志向もあり、中古市場に端末が流れない構造ができあがっている。

■総務省も問題視

 流通量の少なさを総務省は問題視する。4月には大手3社が国内流通を不当に制限していると判断した場合、業務改善命令の対象とするよう指針を策定するとした。

 ただ何をもって「不当に制限している」と判断するかはあいまいで、実効性には疑問も残る。消費者から買い取ったスマホを海外業者のほうが高く買い取ってくれるのであれば、ビジネスの観点から「不当」と断定するのは難しい。

 中古端末の流通経路を抜本的に変えるにはさらに踏み込んだ指針が必要になる。全国にショップ網を持つ大手キャリアと違い故障などに対応する体制づくりも課題だ。

 最新型のiPhoneが10万円を超えるなど、高スペック化にともなってスマホの価格は上昇傾向にある。そのなかで割安な中古品への期待は高い。価格に敏感な層が多い格安スマホにとっては相乗効果も高い。

 格安勢の「iPhone攻め」が軌道に乗れば「iPhoneはキャリアでしか買えない」「2年に1回、新品に買い替える」といったこれまでの「常識」が崩れ、中古スマホ市場の認知が一気に広がる可能性もある。

(企業報道部 河野真央)

[日経産業新聞 2018年6月29日付]

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