アマゾン、医薬品通販に参入
【ニューヨーク=中山修志】米アマゾン・ドット・コムは28日、処方薬のインターネット販売を手掛けるピルパック(ニューハンプシャー州)を買収すると発表した。成長株の新興企業を買収し、医薬品の販売に本格参入する。比較的業績が堅調だった米国のドラッグストア業界にも「アマゾン・エフェクト」が及びそうだ。
アマゾンは買収額を明らかにしていないが、市場関係者によると10億ドル(約1100億円)程度とみられる。2018年中に買収手続きを完了する計画だ。
ピルパックは薬剤師の創業者が13年に設立した新興企業。ハワイを除く全米で処方薬やビタミン剤の宅配サービスを手掛ける。
ネットで処方箋を受け付け、1回の服用分を小分けに包装して配送する。高齢者らを中心に利用が広がっている。米メディアによると、米小売り最大手のウォルマートもピルパック買収に関心を示していたという。
ピルパックの17年の売上高は1億ドル程度とみられる。規模は小さいものの、アマゾンが品ぞろえに加えれば販売を大きく押し上げる可能性がある。自社のAIスピーカーで家庭の常備薬を管理し、減った分を定期的に配送するといったサービスも視野に入る。
処方薬の販売には認可や薬剤師の配置が必要なため、日用品などと比べて通販企業による参入のハードルが高い。スーパーや百貨店がアマゾンの影響で業績を落としているのに対し、処方薬を強みとするドラッグストアの業績は堅調だった。
だが、アマゾンが医薬品に参入すればドラッグストアへの影響は避けられない。28日の米株式市場では、大手のCVSヘルスやウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの株価が大幅に下落した。
生鮮食品に続いて医薬品にも品ぞろえを広げることで、アマゾンの経済圏はさらに巨大になる。米国や日本では事業の成長スピードに配送体制が追いつかず、宅配の担い手不足が問題化した。アマゾンは車両や情報システムを個人事業主に提供して宅配を請け負ってもらう仕組みを米国で導入。自前で配送網を整備し、商圏拡大に備える。