土と遊ぶ、器を探す 茨城・笠間へ大人の陶芸遠足
水津陽子のちょっとディープ旅

笠間焼で知られる陶芸の里、茨城県笠間市。中心部にある自然豊かな丘陵には、陶芸専門の美術館や体験施設を備える「笠間芸術の森公園」。丘陵の下には、代々続く窯元や個性あふれるギャラリーやショップが立ち並ぶ「笠間やきもの散歩道」が広がります。
一日ゆっくり陶芸体験に没頭したり、窯元やギャラリー巡りを楽しんだり、大人の「陶芸遠足」に出掛けてみては。8月には幽玄な陶器祭も開かれます。歴史ある笠間稲荷神社など、訪ねたいスポットもいっぱいです。
土に触れ、無心になれるオフタイム
JR友部駅または笠間駅から「かさま観光周遊バス」で約10分。「笠間芸術の森公園」は、東京ドーム11個分、54.6ヘクタールの広さです。中には、陶芸家を養成する大学校や、東日本で初めての陶芸専門の美術館、陶器アートが並ぶ散策路、200人もの笠間焼の陶芸作家の作品が一堂にそろうギャラリー、陶芸の体験施設などが集まります。
公園内にある「笠間工芸の丘」では1日に3回、手ひねりやろくろ、絵付けなどの陶芸体験が可能。粘土を手で成形する手ひねりでは自由な造形ができます。電動ろくろを使った本格的な陶芸体験では粘土の形がみるみる変わり、器になっていきます。無心になって土と向き合い、世界に一つだけの器をつくってみては。
体験では、器に掛ける色も12色から選べます。1日では物足りない人には、基礎から学べる陶芸教室(手ひねり全6回/ろくろ全12回)も用意されています。
陶芸体験は市内5カ所の窯元でも実施しています。笠間工芸の丘から約1.4キロメートル(徒歩18分)、寛政8年(1796年)開窯の「製陶ふくだ」では、体験以外にも登り窯や笠間焼の古陶や貴重な資料を収めた「笠間焼歴史館」、世界57カ国から約600点の陶器を集めた「世界の焼物博物館」、インスタ映えしそうな高さ10.7メートルの巨大花瓶なども見られます。
(※笠間工芸の丘での陶芸体験は要予約。窯元では飛び込みでの体験が可能な場合もありますが予約が確実です)
窯元・ギャラリーを巡る散歩道でお気に入りを見つける
窯元やギャラリーショップ巡りをするなら、工芸の丘の下に広がる「笠間やきもの散歩道」に出かけてみましょう。ここには全長2キロメートルにわたってギャラリーやショップが立ち並ぶ「ギャラリーロード」があり、さらに、代々続く窯元が集まる「やきもの通り」や「陶の小径(とうのこみち)」が連なっています。

ギャラリーロードにある中庭を囲む回廊型のギャラリー、「回廊ギャラリー門」。緑あふれる屋外スペースには自然光が差し込み、器がより魅力的に映えます。アートスペースとしても人気が高く、お気に入りの作家や器を探すのが楽しい空間です。蔵をイメージしたギャラリーでは陶芸家の個展が開かれており、ショップには和小物も充実。子ども用の食器などもあり、女性に人気のギャラリーの一つです。

ギャラリーロードには笠間焼以外にも、全国のガラス工芸作家の作品を集めたセレクトショップ「グラスギャラリー SUMITO」や、レストランやカフェなど飲食店も多く、散歩・休憩の場所に事欠きません。
「cafe WASUGAZEN笠間店」は、映画の予告編を制作する会社がプロデュースしたお店。店内では最新映画の予告編が上映されています。スイーツも人気ですが、地元食材を使ったランチやディナーメニューが充実、値段もリーズナブルです。天気のよい日は庭に面したテラス席もおすすめ。かわいいお稲荷様がある公園の隣です。

行列ができる「佐白山のとうふ屋」では人気の豆腐スイーツもお見逃しなく、ゆっくり滞在して散策や陶芸体験をしたい方には「ホテル イオ アルフェラッツ」があります。
ギャラリーロードから陶の小径を抜けた先には、伊東豊雄氏設計の「笠間の家」があり、現在ギャラリー・カフェとして活用されています。近くには広大な陶芸の里を一望できる高台もありますので、ぜひ上って眺めてみてください。
幽玄な祭りやイベント、神社も必見
やきもの以外にも、笠間は日本三大稲荷の一つに数えられる「笠間稲荷神社」、良縁結びの神様として知られる「常陸国出雲大社」、親鸞聖人が20年を過ごし、浄土真宗発祥の地とされる「稲田禅房 西念寺(稲田御坊)」など必見のスポットが点在します。

笠間稲荷神社では、春は樹齢400年の八重藤、秋は百余年の歴史をもつ菊まつりも有名ですが、江戸時代の名工によって美麗な飾り彫りがされた本殿は国登録重要文化財の総ケヤキの権現造り。本殿後部の7枚の「蘭亭曲水の図」は必見です。参道には仲見世、通りをはさんだ反対にはお神酒「松緑」をつくっている「笹目宗兵衛商店」があり、酒蔵見学や甘酒ソフトクリームなども楽しめます。稲田御坊はかやぶきの山門がみごとで、境内に茂る樹齢800年の巨木は比叡の峰をほうふつとさせるといわれます。
笠間は四季を通じて祭りやイベントも多いのですが、8月には地元陶芸家や窯元などが制作した約1千本の陶の筒明かりが通りを彩る「十六夜まつり」、ねぶたやおみこしが町を練り歩く「笠間のまつり」など、幻想的な祭りでにぎわいます。

笠間へのアクセスはJR上野駅から友部駅まで特急列車で1時間10分、友部駅から笠間駅までは普通列車で10分ほど。片道1600円の高速バス「関東やきものライナー」なら、秋葉原からやきもの通りまで約1時間40分。友部駅または笠間駅周辺の主要観光地へは、1回乗車100円、一日乗車券200円の「かさま観光周遊バス」が便利。笠間駅前観光案内所ではレンタサイクルも提供しています。
合同会社フォーティR&C代表。経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、コンサルティング、調査研究などを行う。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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