親子上場のゆがみ突く 経営改善、ファンドが要求
株主解剖(2)
「親会社は上場子会社の株式を買い取って完全子会社にするか、持ち株を売却するか明確にすべきだ」。大和住銀投信投資顧問の上石卓矢ファンドマネージャーは親会社と子会社が共に上場する投資先に提案している。
親子上場は欧米でほとんどみられない日本独特の資本政策。だが企業統治や株価形成の面で問題も多く、投資家から見直しを求める動きが相次ぐ。
親子上場の問題点は大きく3つある。1つ目は親会社が自らの利益を優先して子会社の一般株主の利益を損なうリスクだ。親会社は子会社上場後も資本や人事を通じて子会社の経営に影響力を残す。子会社の株主は不合理だと思う資本政策に対しても抵抗しにくい。
2つ目は資金の「二重取り」だ。親会社は子会社も含めた企業価値を裏づけに上場時に市場から資金を集め、さらに子会社上場で再び資金を得るためだ。東京証券取引所は新規上場ガイドブックで「(親子上場は)新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えられ、上場審査では慎重に対応する」と説明している。
親子上場は親会社の一般株主にとってもいいことばかりではない。子会社の稼いだ利益の一部が少数株主持ち分利益として外部に流出するのが3つ目の問題だ。イオンでは連結純利益が子会社のイオンモールを下回る。
投資して株主として親子上場の是正を求める投資家が相次いでいる。
「親会社の凸版印刷による統治の欠如が問題だ」。28日の図書印刷の株主総会で同社株の7.33%(QUICK・ファクトセット調べ)を握るストラテジックキャピタルの丸木強氏が発言した。

図書印は凸版が51%の株式を持ちPBR(株価純資産倍率)が1倍を割る。丸木氏は株価低迷の原因が親子上場にあるとして経営改善を迫る。
シンプレクス・アセット・マネジメントはイハラケミカル工業に3割出資していたクミアイ化学工業に投資。その後、16年に両社は経営統合を決めた。シンプレクスの水嶋浩雅社長は親子上場について「多くの投資家は何を言っても無駄とあきらめているが、そこが狙い目だ」と話す。
子会社の時価総額が親会社を上回るケースもある。香港のオアシス・マネジメント・カンパニーはGMOインターネットとパソナグループに投資。GMOの時価総額は子会社のGMOペイメントゲートウェイの6割、パソナGは子会社のベネフィット・ワンの3割だ。オアシスは「(親が)子会社の時価総額を下回るのは甘受できない」と経営効率化を求める。
野村資本市場研究所の調べでは親子上場している子会社数は3月末で263社と、ピークの07年3月末(400社超)から4割減った。西山賢吾氏は「親子上場に対する市場の目が厳しくなっており、今後も減少基調は続く」と話している。
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