2019年7月24日(水)

大阪モノレール、運休長期化のわけ 点検に難しさ

2018/6/27 12:16
保存
共有
印刷
その他

大阪府北部を運行する大阪モノレールは18日に発生した最大震度6弱の地震で、合計約1週間に及ぶ運休に追い込まれた。JRなど他の鉄道各社は地震翌日にほぼ全線が復旧、影響の長期化が目立った。高架橋の上をレールが走る構造のため、職員が歩いてレールを点検することがほぼ不可能で安全確認に時間がかかる事情に加え、地震に弱い設備や部品の存在も浮き彫りになった。国や事業者は対策を迫られている。

20日に一部区間で運転を再開した大阪モノレール(21日)=共同

点検車と高所作業車による点検作業(大阪高速鉄道提供)

「主要な交通手段がモノレールだけに、運行が止まると厳しい。出勤できない職員もいた」。大阪モノレールの駅に近い大阪府茨木市のある特別養護老人ホームの担当者は振り返る。運休中は7人の職員が出勤できない日もあったという。

近くに住む職員にシフトを変え、別の駅まで車で迎えに行くなどして人員を確保したが「再開がさらに遅れたらどうしようかと思った」と話す。

18日午前8時前という通勤や通学のまっただ中に起きた地震の直後、大阪モノレールは運行中だった18本(1本4両編成)を緊急停止し、点検作業に入った。

一般の鉄道と異なり、1本のレールが高架橋の上を走るモノレールは線路脇にスペースがない。保守担当者が歩いてレールをチェックできず、専用の点検車をレール上で動かしながら点検を行う。

点検車による安全確認は運行を停止している車両までの区間を一つ一つ巡視。その後18編成の車両を順に車庫に移動させる作業を繰り返したため、時間を要した。

さらにモノレールの軌道を切り替える分岐器の約4割で不具合も見つかった。大阪モノレールは総延長が計28キロと国内最長で、唯一支線を持つため分岐器の数が多い。

レールの支柱や駅舎の耐震補強は進めてきたが、分岐器に耐震性能を持たせるのは技術的に困難。計33基のうち13基で軌道の位置を固定する装置がゆがむなどして、交換を余儀なくされた。

上下線の50キロ以上に及ぶレールの点検と分岐器の交換が重なり、全線での運行再開は18日の地震発生から6日目の23日。大阪国際(伊丹)空港につながる主要インフラだけに、約62万4千人に影響が出た。

再開もつかの間、24日には一部の車両で振動を吸収するゴムブロックが台車から外れかけているのが見つかり、再び全線が運休に追い込まれる。

外れても走行に直ちに支障は生じないが、落下する恐れがあった。大部分の区間の真下は道路で、ブロックが落下すれば通行中の車に危険を及ぼすとして運休を決めた。

ゴムブロックは内部部品で目視のチェックが難しく、点検は2年に1回のタイヤ交換の際などに限られる。モノレールを運行する大阪高速鉄道は「ゴムブロックの故障は想定していなかった」(担当者)としている。

国土交通省は「地震でゴムブロックにずれが生じることは今回初めて分かった」と重視、他の事業者に周知した。東京都心を走る東京モノレールは「各社で協力して災害時の対応策を検討する必要もあるだろう」(担当者)としている。

■専門家「機器、設計段階から対策を」「ドローン有効では」

設備機器の弱みと高架橋の上という点検の難しい構造が思わぬ長期の運休につながった大阪モノレール。専門家は設計段階から部品の構造を見直すことや、新たな点検のあり方を模索する必要性を指摘する。

長期にわたる運休の要因の一つとなった分岐器の損傷について、京都大の清野純史教授(地震ライフライン工学)は「発生が懸念されている南海トラフなどの大地震でも同様の問題は起こりうる。メーカーとも協力し揺れに強い仕組みの機械を作るために、設計段階から対策を検討する必要がある」と指摘する。

点検が困難な高架橋の上などの安全確認のあり方について、金沢工業大の徳永光晴教授(環境土木工学)は「人が容易に近づくことができないインフラの安全点検では、ドローンなどの先端技術の活用も有効ではないか」と指摘する。「法整備の進展が前提だが、新技術をいかに安全確認に生かすかの検討も進めていくべきだろう」と話す。

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。