2019年8月22日(木)

11億円調達した情報医療、AI分析を健康に生かす

2018/6/26 11:30
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人工知能(AI)を活用した医療情報の分析やオンライン診療を手掛ける情報医療(東京・千代田)は、4月末までに三菱商事など4社から11億円を調達した。三菱商事以外は社名非公表だが、調達先はすべて事業会社または事業会社傘下のファンドだ。原聖吾・最高経営責任者(CEO)に今後の事業戦略を聞いた。

原聖吾氏(はら・せいご) 2006年に東大医学部を卒業し、国立国際医療センター(現国立国際医療研究センター)で臨床研修医として勤務。日本医療政策機構や米国留学を経て、11年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。15年に情報医療を創業。36歳。

原聖吾氏(はら・せいご) 2006年に東大医学部を卒業し、国立国際医療センター(現国立国際医療研究センター)で臨床研修医として勤務。日本医療政策機構や米国留学を経て、11年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。15年に情報医療を創業。36歳。

――大手企業からの大型調達となります。用途は何ですか。

「サービスの開発費用などにあてたい。データ分析事業では現在開発中の案件が複数ある。オンライン診療事業はマーケティングや営業などで導入医療機関を広げていく必要がある。業容拡大に伴い、従業員も増やす予定だ。今回の資金調達で医療に関連する企業から出資を受けたので、事業面でも連携していきたい」

――社名の通り、医療に関する情報が事業の柱の一つです。

「一人ひとりの健康や医療に関する情報を活用することで、個人が納得して生きていける社会を実現したい。病気になってから初めて健康について考えるのではなく、主体的に日々の健康を管理しながら暮らしていけるようにしたい」

「医療データには電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)、健康診断の記録、画像、動画などがある。個人や企業、大学・研究機関、医療機関が保有している様々なデータをAIで分析し、健康や医療の領域で生かしたい」

――AIによる分析が医療に役立つ事例を具体的に教えて下さい。

「例えば企業の産業医が健康診断やレセプトのデータから『この人はこの病気になりそうだ』ということがわかれば早期に対処できる。手術動画をAIに学習させて技術力の高い医師の手術はどうやっているかを分析すれば、若手医師の技術向上につなげることができる。これまで医療のエキスパートが『匠(たくみ)の技』として持っていた暗黙知をデータ分析で見える化することで外に広げることができるだろう」

――もう一つの柱であるオンライン診療サービス「curon(クロン)」の見通しは。

「現在約600件の医療機関が導入している。診療報酬改定で4月からオンライン診療が保険適用となり関心は高まっている。主に都市部の医療機関が患者の需要に応える目的で導入している。この領域でトッププレーヤーを目指す」

「全国に診療所は約10万件あるが、オンライン診療を導入している診療所はまだ少ない。競合他社を含めても、2000件未満ではないか。開拓余地がある。当社のオンライン診療システムは、データを収集・活用しやすいシステムにしているのが特徴。AIによる分析も活用し、オンライン診療を通じた患者への便益を提供していきたい」

■ ■ 記者の目 ■ ■

情報医療のAI技術を支えるのが最高技術責任者(CTO)の巣籠悠輔氏を中心とする技術チームだ。巣籠氏は東大の松尾豊研究室で深層学習を研究し、現在も東大で招へい講師を務める深層学習のスペシャリスト。グーグルのニューヨーク支社で働いていたとき、原氏のマッキンゼー時代の同僚だった草間亮一最高執行責任者(COO)に誘われて参画を決めた。

AI技術を売りにするスタートアップは数多いが、医療に特化した企業は少ない。原氏の医療に関する知見とAI技術のかけ算から生み出されるイノベーションに期待したい。分析するデータがなければ始まらないので、医療機関や大企業などとの連携が必須となる。

一方、オンライン診療ではメドレー(東京・港)など競合も少なくない。情報医療のシステムは医療機関に対しては無料で提供しているため、利用する患者数が増えないと収益につながらない仕組み。業界トップを目指すには、医療従事者にいかに訴求して浸透させ、利用者を増やせるかがカギとなる。  (佐藤史佳)

[日経産業新聞 2018年6月26日付]

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