2018年9月21日(金)

京大の「顔」iPS細胞で生命科学に革新を
起業の都(2)マイオリッジ南氏、iHeart角田氏

スタートアップ
ヘルスケア
関西
科学&新技術
2018/6/26 6:30
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 生命科学分野に強い京都大学の「顔」といえるのがiPS細胞だ。様々な細胞に変化でき、再生医療の分野に革新をもたらすと期待されている。京大からは関連スタートアップも多く生まれている。心筋細胞の培養技術を持つマイオリッジ(京都市)の南一成技術顧問と、心臓再生医療分野に取り組むiHeart Japan(京都市)の角田健治社長に事業にかける思いや戦略などを聞いた。

 月曜朝刊連載「スタートアップ#京大」に連動し、大学関係者や京大出身の起業家らに展望や課題を聞いたインタビュー「起業の都」を11回にわたり公開します。

マイオリッジ(京都市)の南一成技術顧問

マイオリッジ(京都市)の南一成技術顧問

■「iPS細胞を量産、創薬の効率化に」

 細胞の培養には動物由来のたんぱく質が不可欠で、量産に莫大な費用がかかるのが課題だ。マイオリッジ(京都市)はたんぱく質なしに化合物だけを使い、従来の100分の1のコストで心筋細胞を培養する技術を持つ。京都大学で培養技術を確立し、創業者の1人である南一成技術顧問(43)に今後の戦略を聞いた。

 ――どういった経緯で起業に至りましたか。

 「化合物での培養に関わる特許を京大で5つ出した。マイオリッジの事業に必要な技術が出そろったのは2014年ごろ。iPS細胞への社会からの期待が高まる中で、緊張感を持って早く患者に役立つようにしたいとの思いが強まり、15年末に起業を決断した。広く技術を提供したいので、大企業の傘下に入ることは考えなかった」

――iPS細胞由来の心筋細胞をどのように活用しますか。

 「アレルギー薬や抗がん剤を中心にあらゆる薬の開発では心臓への副作用を調べる必要がある。心筋細胞を大量生産できれば動物実験を省くなど、治験を効率化できる。既に製薬会社などへの出荷を始めているが、輸送などに必要な技術も集めている段階だ。人体に移植して心臓の再生につながる技術も2~3年以内に確立したい」

――京大の強みは何ですか。

 「発明や理論構築に自由に取り組む風土があるところだ。民間の資金が入って短期での成果が求められるようになっても、伝統である基礎研究は別の軸で残り続けると考えている」

(聞き手は上田志晃)

iHeart Japan(京都市)の角田健治社長

iHeart Japan(京都市)の角田健治社長

■心臓再生医療「物質特許でコア技術守る」

 京都大学iPS細胞研究所の研究成果を応用した心臓再生医療の実現を目指し2013年に設立したiHeart Japan(アイハートジャパン、京都市)の角田健治社長に聞いた。

 ――事業の概要を教えてください。

 「iPS細胞を心筋などの細胞に成長させる技術を基盤に、研究ツールと再生医療製品を開発する。研究ツールではタカラバイオと提携し、16年に心筋細胞や血管の細胞を発売した」

 「心不全を治療する再生医療製品の開発も進める。心筋細胞に血管の細胞などを混ぜた薄膜を積層した組織を心臓に貼り付ける。組織が分泌するたんぱく質などが心機能を回復させる。組織内の血管に血液循環が起こり長期間生着するため類似製品より効果が高い」

 ――強みは何ですか。

 「医薬品業界ではコア技術を守る特許が重要だ。製法特許では他社が別の方法で同様の最終製品を製造し販売することを防げない。我々は京大から特許になる前の発明を譲り受け、ビジネスに強い物質特許を取得した。大学の発明を知財化する際に、将来のビジネスで高い参入障壁を築く意識が欠かせない」

 ――今後の開発計画を教えてください。

 「18年4月に完成した細胞培養加工施設を活用し、19年の前半までに京大主体の臨床研究を開始する。並行して治験の準備を進め20年に開始する」

(聞き手は岩井淳哉)

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