2018年11月15日(木)

台北に米新庁舎、神経とがらす中国

The Economist
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2018/6/29 5:50
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トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長がシンガポールで米朝首脳会談を実現させたのと同じ日、台湾では米国在台協会(AIT)台北事務所の新庁舎落成式が行われた(米国と台湾の間には国交がない。AITは正式な大使館ではないが、台湾に関する実務を維持する役割を担う)。

世界を沸かせた米朝会談の陰で、この件が大々的に報道されることはなかった。しかし中国当局は、米国の外交官や連邦議会議員に、台北での式典に誰を参加させるか、うるさいくらい注文をつけてきた。この様子を見ていると、中国は朝鮮半島における地政学的な問題と同じくらい、いやもしかするとそれ以上に、米国が台湾問題でどう動くか、気にしているように思える。

AITの台北新庁舎落成式には米国からロイス米国務次官補(左)が出席した(右は台湾の蔡総統)=AP

AITの台北新庁舎落成式には米国からロイス米国務次官補(左)が出席した(右は台湾の蔡総統)=AP

米国は中国との国交を正常化した1979年に台湾と断交し、以来「1つの中国」という原則を対中関係の基本としてきた。台湾を国家と呼ばず、たとえ中国と台湾がその定義を巡り意見を異にしていても「中国は1つという見解を中国と米国の双方が持つ」との認識は不変とするスタンスを貫いている。

こうした空手形を切りながら、米国は非公式に台湾と親密な関係を築いてきた。米国がAITという非公式の対台湾窓口機関を台北に置くことに関し、中国はあまり気にしてこなかった。長い間、AITの事務所は台北市内のさえないエリアにある、元軍事施設の薄汚い建物内に構えられていた。

6月12日に公にされた新庁舎は、台北で最も開発が進む内湖区の高級エリアに立ち、建物の外観もシンボリックなものとなった。建設には2億5000万ドル(約277億円)が投じられた。どこから見ても立派な大使館だ。500人近くいる職員の大半は一時的に米国務省から離れているとはいえ、米国の外交官だ。AITはビザの発給業務を行う。トランプ政権はここを警備するために海軍兵士の派遣を検討しているという。

■ボルトン氏は出席せず

世界中が「台湾は中国の一部」と振る舞うことを望む中国にとって、新庁舎の存在は挑発的なものだ。米国議会が全会一致で可決し、3月にトランプ大統領が署名し成立した「台湾旅行法」についても同様である。これは米台高官の往来を促進する法律だ。中国はこれまで、米国が落成式に上級官僚を派遣すれば北朝鮮を巡る協力のみならず貿易交渉も破談にすると強調してきた。中国にとって最悪のシナリオはボルトン米大統領補佐官が出席すること。ボルトン氏は米国が1つの中国政策を見直すべしとの主張を持つ。

結局、トランプ政権は米朝会談から世界の関心がそれないよう、落成式を控えめに行った。米国から参加した当局者の最高位もマリー・ロイス国務次官補にとどめた(同氏は台湾擁護を掲げる連邦議会議員の配偶者でもある)。

式典では事実上の米国大使に当たるキン・モイAIT台北事務所長が台湾の方法に倣い、果物と花が積まれた祭壇の前で3回礼をした後、線香に火をつけた。そして台湾の蔡英文総統と参列者たちに向かい、「この建物は、米国と台湾のパートナーシップを象徴するものだ」と述べた。AITのジェームズ・モリアーティ理事長は、民主主義体制をとる台湾を「インド洋・西太平洋地域における模範的存在」と持ち上げ、台湾の自衛能力に対して米国が今後も支援を惜しまないと約束した。トランプ大統領は台湾に対し、14億ドル(約1550億円)相当の武器売却を承認している。

新庁舎の借用期間が99年であることも、中国は面白くないと思っている。つい最近、自らの役職の任期を撤廃したばかりの習近平(シー・ジンピン)中国国家主席は、「台湾が自発的に母国に帰還するのを永遠に待つことはできない」と主張している。

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