2019年7月17日(水)

企業・情報・交通 都市災害の課題、識者に聞く
大阪北部地震1週間

2018/6/25 1:00
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大阪府北部で震度6弱を観測した地震は、都市型災害の課題を改めて突きつけた。今回の教訓を生かし、どう災害に強いまちづくりを進めるか。企業対応、情報発信、交通インフラの観点から識者に聞いた。

SOMPOリスケアマネジメント・徳本諒氏 企業対応「出社を強いぬ風土に」

SOMPOリスケアマネジメントの徳本諒氏

SOMPOリスケアマネジメントの徳本諒氏

今回の地震は通勤時間帯と発生時刻が重なった。出社するかどうかを決める明確な基準や取り決めがなく、社員の自己判断に任せた企業も多かったのではないか。災害発生後に各社員へ指示を出そうとしても、時間帯や災害規模によって本社内に対策本部を設置できなかったり、通信手段が途切れたりするリスクがある。災害時の行動ルールを社員に前もって提示することが重要だ。

ただ、被災状況に応じて対応策を細かくし過ぎるのは現実的ではない。複雑なルールは社員も覚えられず、余計な混乱を招きかねない。判断を社員に任せざるを得ないケースは起こり得るため「発生時に自宅に近い場合は帰宅する」「会社の拠点が近くにあればそこに移動する」などの基本原則を示すべきだ。従業員を無理に出社させない企業風土の醸成も必要だ。

職場の被害が長期化する場合などに備え、業種によっては自宅で仕事ができる体制を整えることも有効だ。働き方改革の一環として広がりつつあるが、防災面でも効果的なリスク管理になる。

東大総合防災情報研究センター長・田中淳氏 情報発信「複数ツール、多言語で」

東大総合防災情報研究センター長の田中淳氏

東大総合防災情報研究センター長の田中淳氏

高度に情報化した都市部で起きたにもかかわらず、今回の地震は情報発信の面で課題を残した。一部の自治体でライフラインに関わる重要な情報が掲載されたホームページ(HP)がダウンする事態が発生。運転再開を待ってターミナル駅の周辺に滞留した多くの人々に、復旧状況についての細かな情報は届かなかったのではないか。

発信源が少ないと情報の伝達力は弱まる。自治体や交通機関などはHPだけでなく、ツイッターや防災無線、テレビやラジオといったメディアを組み合わせ、複数のツールを使って重層的に発信することが重要だ。また、被害状況を取りまとめようとするとかえって時間がかかるので、人々の不安を解消し多くの選択肢を示すためにも、有用な情報は迅速に出すという心がけも欠かせない。

駅や空港には立ち往生した外国人観光客の姿も目立った。同じ外国人でも日本居住者と観光客は求める情報が異なる。多言語への対応だけでなく、観光客向けに特化するなど発信方法の工夫も求められる。

兵庫県立大大学院教授・室崎益輝氏 交通復旧「人海戦術頼みに限界」

兵庫県立大大学院教授の室崎益輝氏

兵庫県立大大学院教授の室崎益輝氏

国内の大都市部が震度6級の地震に襲われたのは1995年に起きた阪神大震災以来だ。大震災と比べれば災害の規模は小さいが、都市機能はマヒし、災害に対する脆弱性が浮き彫りになった。

公共交通機関やライフラインを安全確保のため止めるのはやむを得ない。しかし、被災地を人海戦術で回る現状の復旧作業の方法は見直す必要がある。高度に機能が集積した都市部だからこそ、修復のスピードを高める工夫が欠かせない。

災害に対する市民一人ひとりの心構えが足りなかったことも反省点だ。大地震の発生時は不要不急の電話や外出を控え、安全な場所で過ごすのが原則なのに、多くの人が普段通りに活動しようとし、帰宅困難者の増加や幹線道路の渋滞を招いた。個人の事情よりもインフラなどの復旧を優先させることが、都市機能の混乱を早く解消することにつながる。

教訓とすべき点は多く見つかった。南海トラフ地震や首都直下地震などに備え、想像力をたくましくして迅速に手を打つ必要がある。

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