2018年9月22日(土)

欧州難民、揺らぐメルケル政権 EU緊急会合「欧州外に拠点」案も

ヨーロッパ
2018/6/24 17:54 (2018/6/24 22:42更新)
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 【ベルリン=石川潤、ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は24日、移民・難民問題への対応を協議する緊急の首脳会合をブリュッセルで開いた。関係国に開催を要請したのは、難民らの流入で閣内に深刻な対立を抱えるドイツのメルケル首相だ。6月末までに閣内の強硬派を説得する解決策を見いだせなければ、メルケル氏は政権崩壊の瀬戸際に立たされる。

 24日の会合にはEU加盟28カ国のうち、ドイツやフランスのほか、地中海を渡ってEU入りする難民らの「玄関」となるイタリアやギリシャなど16カ国が参加。一方、難民らの受け入れを巡り分担を拒否するハンガリーやポーランドなど東欧4カ国は参加しなかった。

 EUは28~29日の首脳会議で難民問題を含めたEU改革案を議論する。その前に緊急の首脳会合を開き、難民受け入れのルール見直しに向けた方向性を固めたいというのがメルケル氏の思惑だ。メルケル氏は24日の会合前、欧州全体での難民問題での合意が困難であることを認め「2国間、3国間の協定」を同時に探る考えを示した。

 メルケル氏が緊急会合を要請したのは、ドイツで閣内の対立が深刻になっているためだ。難民流入に不満を募らせる保守派のゼーホーファー内相がイタリアなど他のEU加盟国で難民申請した人を国境で追い返す方針を表明。メルケル氏はドイツが国境を閉じれば欧州で難民排斥の動きが連鎖すると反発し、3カ月前に成立したばかりの連立政権が揺らぎ始めた。

 メルケル氏のキリスト教民主同盟(CDU)と、ゼーホーファー内相が率いるキリスト教社会同盟(CSU)は連立政権のパートナー。CSUの地盤である独南部バイエルン州は10月に州議会選挙を控え、難民問題で強い姿勢を示さなければ極右政党に票を奪われるとの危機感が強い。

 内相の解任をちらつかせるメルケル氏と、連立離脱も辞さない構えのゼーホーファー氏。月末までにメルケル氏がEU加盟国と調整し、難民抑制の具体策をまとめることで両者は折り合ったが、調整に失敗すれば、内相が入国規制を強行して政権の分裂が決定的になるとの見方が多い。

 メルケル氏は、欧州に流入する難民らの数を抑えたうえで、難民申請をした人が勝手にドイツなどに移動できないようにする解決策を念頭に置いている。緊急会合の合意文書の素案には、難民が支援を受ける国を限定し、EU域内を許可なく移動するのを防ぐ案などを盛り込んだ。

 ただ、難民らの上陸地となっているイタリアのコンテ首相は、域内の移動を制限すればイタリアだけが負担を押しつけられると懸念。21日には「我々の立場を誰も無視できない」と、一部の提案を押し返したことを明らかにした。イタリアは地中海で救助された難民らの上陸を拒否するなど強硬姿勢を見せ、対応を批判するフランスとの溝が深まっている。

 イタリアなどに上陸した難民らを加盟国が分担して受け入れる案にはハンガリーなどが反対している。地中海で救助した難民らを北アフリカなどEU域外の収容所に保護する案も浮上している。

 28~29日の首脳会議で採択を目指す総括文書の素案では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などと連携し、EU域外の収容施設でEUが受け入れる難民と、本国に送還する経済移民を選別する案を盛り込んだ。ただ、域外に拠点を設けることで逆に欧州を目指す経済移民を増やしたり、本来保護されるべき難民が不当に扱われたりすると反対する意見もある。

 欧州各国が難民らの流入抑制で一致しながらも、具体策で足並みがそろわないのは、難民らへの反発でポピュリズム(大衆迎合主義)が勢いを増すなか、内政への対応を優先せざるを得ないためだ。欧州の盟主であるはずのドイツのメルケル首相ですら、求心力の低下で移民反対の強硬派による主張を押し返せなくなっている。

 独仏は19日、首脳会議で議論するEU改革案で合意し、マクロン仏大統領が主張するユーロ圏共通予算を盛り込んだ。難民問題でマクロン氏の協力を引き出すためにメルケル氏が譲歩したとの見方がある。独仏を軸に首脳会議で欧州が難民問題を巡る亀裂を解消できるかが焦点となる。

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