OPEC、減産緩和で合意 供給不足に対応 - 日本経済新聞
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OPEC、減産緩和で合意 供給不足に対応

(更新)

【ウィーン=飛田雅則、篠崎健太】石油輸出国機構(OPEC)は22日、ウィーンの本部で定例総会を開き、7月以降、原油の協調減産を一部緩めることで合意した。米国の対イラン経済制裁やベネズエラの混乱による供給不足への懸念が出ているためだ。ただ、増産幅は市場の予想より小幅で、原油相場の上昇を抑制する効果は限定的になりそうだ。

23日に開く非加盟国との会合に提案し、協調減産の緩和を正式に決める。総会後に記者会見した議長国アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は「原油価格の安定をはかる」と語った。

OPEC加盟国は原油価格の下落を抑えるため、17年から日量120万バレル(ロシアなどの非加盟国は日量60万バレル)の減産を目標に設定。しかし実際には目標の150%にあたる日量180万バレル程度が減産されており、7月以降は日量120万バレルの削減とした当初目標の順守率を100%まで抑える。これにより市場では現状から日量60万~80万バレルの増産になるとの見方が出ている。

ただ、22日に指標の北海ブレント原油先物は一時、前日比3%高の1バレル75ドル台まで急伸。ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物も一時1バレル68ドル前後と3週ぶり高値を付けた。今回の合意では価格の抑制効果は限られるとして買いが先行した。

もともと産油国が増産に動いたのは5月以降、原油相場が急上昇したためだった。対イラン制裁を緩和してきた核合意からの米国の離脱により、米国の制裁が復活。イラン産原油の輸出が制限される見通しとなったことや、政治的な混乱によるベネズエラの供給量の低下などが原因とされる。

米国も原油の増産を求めていた。トランプ大統領は先週、「原油価格は高い。またもやOPECだ」と4月に続いてツイッターでやり玉に挙げた。11月の米議会の中間選挙をにらみ、国内でのガソリン価格上昇が続けば政権批判につながりかねない。総会後には「実質的にOPECが増産できるよう願っている。価格を抑える必要がある!」と書き込んだ。

米国はサウジアラビアなどに増産を水面下で働きかけていた。対イランで共闘する米国による増産要求に、サウジなど湾岸産油国は応じざるを得ない面もある。

すでに協調減産は2度延長され、目標にしていた先進国の過剰な原油在庫の解消も進んだことも大きい。サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は「今年後半には供給不足になる」と強調していた。

サウジをはじめOPEC加盟国の多くは、国の財政や経済を原油の販売収入に大きく頼っている。とはいえ価格が上昇しすぎれば、マイナスに働く。原油の販売で競合する米国がシェールオイルの生産を増やしたり、消費国が省エネや代替エネルギーにシフトする動きを加速したりして需要が減る恐れがあるからだ。さらにアジアなどの原油輸入国の負担が増え、世界経済の重荷にもなる。

OPECは23日にロシアなど非加盟国と会合を開き、減産緩和への協力を要請する。ロシアのノワク・エネルギー相は今週、「需要が最も高まる時期を控え、何も対策を打たなければ供給不足に陥る」と述べ、増産に前向きな姿勢を示している。

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