馬が人の表情と声を関連付けて感情を読み取れることが分かったと、北海道大大学院の滝本彩加准教授(動物心理学)らのチームが21日、英科学誌電子版に発表した。滝本准教授によると、馬が人の怒った表情に警戒心を抱くことは先行研究で示されていたが、声との関連付けが明らかになったのは初めて。
これまで、同様のことができると分かっていた動物は犬だけだったという。
東京大と東京農工大の馬術部厩舎で2016年8~12月、計19頭(平均年齢14歳)を対象にプロジェクターで投影した人の顔と、スピーカーから流した馬の名前を呼ぶ声への反応を調べた。
顔の表情は「笑顔」と「怒った顔」、声は「褒めるトーン」と「叱るトーン」を用意し、それぞれの組み合わせを検証。表情を30秒間見せた後、顔の投影を消し、15秒後に音声を再生した。「笑顔だったのに叱るトーン」など表情と声が一致しない場合、一致した時より約1.6~2倍の速さで、音声が聞こえてきた方向を見て反応する傾向があったという。
滝本准教授は、表情と声が示す感情の不一致に違和感を持ったためと分析。「馬は人と親密な関係を築いてきた動物。両者の心理的な結び付きの要因が明らかになった」としている。馬が感情を認知する仕組みを解明することで、より円滑なコミュニケーションを取れるようになると期待する。
研究は、東大大学院生の中村航介さんや東大大学院元教授の長谷川寿一さんらとの共同研究。〔共同〕